スクール概要

出版物紹介

脳のワーキングメモリを鍛える 速読ジム』推薦文

「私とクリエイト速読スクール」

瀧本 哲史

 この書籍を手にしたあなたはどんな人だろうか。書店でいかに読むべき本が多いかを再認識して、どうにか本を速く読めないかと悩んでいる人だろうか。あるいは仕事関連で読むべき文書で多忙なビジネスパーソンであろうか。あるいは日々、インターネットで大量の情報に追われている人だろうか。ひょっとしたら、資格試験などのために、効率的な学習方法を必要としている人かもしれない。

 いずれにしても、速読、言い換えれば、文書を速く読み、情報処理能力を向上させるニーズを持つほとんどの現代人にぜひ、お伝えしたいことがある。

 私自身が情報処理能力の必要性を強く感じたのは、大学3年生のときである。

 当時、東大法学部の学期試験は、前期、後期を合わせて1年分を年度末に行う方式だった。私は、法律以外のことも勉強したかったし、授業よりも、最先端の課題について議論するゼミに時間を費やしたくて、答えが決まっている学期試験には時間を使いたくなかった。ましてや、大学3年生ならば、他にも時間を使いたい楽しいことはたくさんある。だから、試験前に教科書や友人から回してもらったノートをできるだけ短時間で学習したい、そう思ったのである。

 そこで、浮かんだキーワードが「速読」だった。

 実は、当時、私の「速読」に対するイメージは非常に悪かった。

 中学生のときに、心理学者の父のリクエストで、ある速読教室に偵察がてらに通ったことがある。しかし、あまりにもつまらないカリキュラムで、効果がなさそうなのですぐやめてしまった(そのスクールは、いまは消えたが、当時はメディアに出たりして著名だった)。

 大学生になって、今度は自分自身の切実なニーズがあり、無駄な時間は使いたくなかったので、各社からパンフレットを取り寄せ、比較した。

 その中で、「クリエイト速読スクール」は異色だった。

 読書という行為を要素分解して、それぞれの要素に対してゲーム感覚で飽きないトレーニングをすることで、結果的に情報処理能力が上がるというプロセスに反証可能性があった。

 また、パンフレットに載っていた受講者の体験記も変わっていた。

 ハーバードビジネススクールに合格した人などが実名で、よかったところはもちろん、カリキュラムの改善方法についても率直に語っている体験記だった。都合のよいことばかり宣伝するわけではなかった。

 いまでもそうだと思うのだが、「クリエイト」はよい意味でも悪い意味でも、商売っ気がない。

 ビジネスとしては、「短期間の講習で身につきます」とかいった方が儲かるだろうに、全く真逆と思えるようなことをしている。

 トレーニングジムのように定期的に通って、得意なところを伸ばしたり、不得意なところを補強して、着実に力をつけていくという謙虚な姿勢である。

 むしろ、そちらのほうが現実的で信用できると思った私は、池袋の小さな教室に地道に通うことにした。効果は絶大で、法律の専門書に対して読書速度は数倍になった。おまけに、教室で普段手に取らないようなたくさんの小説が読めた。

 とても投資対効果が高かったので、いつしか、知り合いに聞かれれば、「クリエイト」を紹介するようになった。ただ、あまりにも速読業界は怪しくて、紹介しにくいので、過去の受講者データを調べてもらったところ、真面目に通った人で3倍速を達成できない人は、ほとんどいないことがわかった。現実的に、ほとんどの人は3倍ぐらいで十分満足できるはずだからということで、「3倍保証制度」を作ってもらった。

 これで薦めやすくなった。後は、「本当に情報処理能力が高まるのならば、司法試験合格者がバンバン出ないとおかしいでしょう」と代表に申し上げたところ、カリキュラムが工夫され、いまでは、私の友人も含め、毎年合格者が出るようになっている。

 そんな「クリエイト」がトレーニングブックを出すと聞いた。「クリエイト」の人たちは真面目なので、買うだけで結構練習できて効果がある内容の本を、満を持して出すことになるはずだ。きっと、ロングセラーになるだろう。

 ただ、スクールのマーケティングとしては、いまひとつかもしれない。というのも、具体的なトレーニング内容がほとんど書かれていない「宣伝本」を、半年ごとにタイトルと出版社を変えて出したほうが、マーケティング的には効果的かもしれないからだ。

 しかし、「クリエイト」の人たちはそれをよしとしない。「日本の国語教育がカバーしていない読書技術を、切実に必要としている人に届ける」という「ロマン」を「ソロバン」より優先しているからだ。

 実際、30年以上経っても池袋の教室とユーキャンとSEGの提携講座でしか受講できない、知る人ぞ知る存在でとどまっている。

 ただ私は、「クリエイト」はもう少し世間に知られるべきだし、「クリエイト」のメソッドを知ることで、助かる人も多いと信じている。何よりも「クリエイト」の変わらない商売っ気のなさを逆に応援したくなるのだ。

 だから、一人でも多くの人が手に取るキッカケを増やすべく、小文を寄せることにした。まずは、中をのぞいてほしい。それ以上は無理にお薦めしない。ただ、切実に必要としている人なら、大学生のときの私のように、その価値がわかるはずだし、「毎日の時間感覚が変わる」キッカケをつかめるはずである。