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この記事は、平成16年度司法試験に合格された、阿部さんによる速読体験記です。
平成16年度司法試験合格 阿部 貴之
クリエイト速読スクールの長所と短所
安さ爆発!
クリエイト速読スクールの受講料は安い。本当に安いと思う。何かウラがあるのではないかと疑うほど安い。いきなりこんな出だしから始まっても何を言ってるんだ、と非難されそうだがこれは重要だ。司法試験受験生といえば大抵の人が金銭的に余裕がないはずだからだ。私の受講のきっかけもこれが大きな割合を占めた。私の実感としては相場の半額、高いところと比較すると四分の一程度だと思う。自分には向かない、損をした、と思ってもダメージは少なくて済む。
ただ、そこだけ強調しても今ひとつのはず。もっと試験に役立つ所をアピールしてよ、という声も聞こえてきそうだ。安い・リーズナブルという長所は十分魅力的だが、中身が充実しているからこその安さ爆発! をアピールせねばなるまい。これを満たしてはじめて安い! と言えるからだ。
司法試験、法科大学院入試にとってクリエイトは……
端的に私の実感を述べれば、速読は短答(択一)試験に、文章演習講座(文演)は法科大学院入試に役立つ。
まず短答試験では、法的知識もさることながら論理力と高度な事務処理能力が重要な要素として要求される。これらを鍛える訓練メニューが講師と相談することで組むことが出来る。体験レッスンを受講してみると分かるが、特にロジカルテストは論理力、事務処理能力の向上に適している。適性試験対策の一環としても役立つはずだ。
次に、法科大学院試験の一科目である小論文試験であるが、これは論理力などよりも純粋に文章読解力と文章作成能力が試されているので、文演での講義が役立つ。文演では文章をただ読むのではなく、書き手に伝わり易い文章をいかに作成するかを考えながら読むという形式をとる点で非常に実践的であるといえる。自己評価書の作成にも効果を発揮するはずだ。
短所が無い学習方法なんて無い
もちろん短所はある。それは通っている期間中自分の能力が上がっているのかどうかよく実感できないことだ。速読コースでは毎回自分が何をどれくらい出来たかを数字で記録するので、その数字が徐々に上がってきていることは確認できる。だが、肝心の試験勉強対策としてどの程度の成果が上がっているのか、これが把握しづらい。もちろん、能力の底上げになっていると割と早いうちに実感できる人もいる。この短所は相当に個人差があるようだが、その辺りの不安解消に役立ったのが、過去の合格体験記群であった。
自分の経験と照らし合わせて
短答試験での失敗
私は平成12年4月(当時大学2年)から司法試験の勉強を始めた。「司法試験の天王山は論文試験にあり」という業界通説に従って論文対策に重点を置いて学習して行ったのだが平成13,14年と連続して短答試験で失敗した私は道を見失いかけていた。
敗因は、時間不足であり事務処理能力の不足である。分かっていても対策方法が思いつかない。そんな時、母が書店で見かけたクリエイトのパンフレットを片手に受講を強く勧めてきた。これがクリエイトとの出会いだった。
プレッシャーとの戦い
受講を始めたがなかなか記録カードの数字が大きく伸びていかない。試験にどう役立つかも見えてこない。途中からは開き直って遊びに行くつもりで受講していた。今思えばこの期間での訓練が能力の底上げになっていたと思う。何だ、若干しか伸びないのかと思う人もいるだろうが短答試験での若干の大切さが分かる人にはこのことは重要である。例えば、1問に付き10秒短縮できれば全体で10分の短縮につながり、更に2~3問解くことができる。この2~3問が合否の分かれ目なのだ。また、この期間を通じて開き直るということを覚えられた点も役立った。
司法試験の勉強と離れて、頭の回転の速さを上げてみようという行動は時間が足りない受験生にとっては何より苦痛(今振り返れば、この苦痛感覚が訓練成績アップの妨げになっていたと理解はできる)だ。
しかし、これくらい気持ちに余裕を持たせられなければ常人の精神力では本試験を乗り切ることは出来ない。最後には開き直らなければ本番ではプレッシャーに押しつぶされて終わりである。この期間に開き直ることを体で覚えられたことは何より重要だったと感じる。
開き直りすぎても良くない
しかし、平成15年も短答試験でこけてしまった。開き直れたのは良かったが、逆に開き直りすぎてしまい、民法で時間をかけても答えが出ないタイプの知識論理融合型問題をじっくり迷ってしまったのだ。終了時間が迫ってきてもあせらないのは良かったが、やりすぎは禁物である。
法科大学院に逃げるも失敗。しかし、ギリギリの逆転。
3年連続で門前払いにあった私はしばらく行動不能でほとんど勉強に身が入らず、気がつけば9月であった。速読も4月の短答直前以降通っていない。この頃、適性試験の追試があるということを聞いた私は、法科大学院入学に方向転換しようと考えた。1カ月程の期間、現行の勉強は一切捨てて準備した。しかし結果は63点。速読にも通っておけば良かったと思う反面、短答が苦手な人間にはいくら努力しても点数が伸びない形式の試験だとも感じた。適性が悪い分小論文等で稼がねば、と考えた私は文演を受講し法科大学院入試に備えた。受験は、お目こぼしを期待して母校である立教のみにしぼったものの書類選考すら合格させてもらえず、文演での成果を試す機会は与えられなかった。
追い詰められた私が死に物狂いで寝る間も惜しんで勉強したか、というとそういう訳でもなかった。ただ、一日一日の勉強の質は向上した。それだけ必死になれたということだ。努力のかいあってか、運も手伝ってか、ギリギリではあったものの平成16年の短答試験を突破し、そして最終合格をも果たすことができた。
あれ? 論文は?
最後に論文試験についても触れておこう。論文は純粋に論理力が試されており、文章が論理的に読み易ければそれで良い試験である。したがって文演でやるような立派な日本語の文章を書くことまでは要求されていない。また文章も短いので速読する必要もない。では、クリエイトでの学習が論文試験には役立たないのか。確かに、私は論文作成が比較的得意だったので論文対策としてクリエイトを利用する意識は無かった。
しかし、文演で、文章眼の鋭い松田さんに講義で使用した教材の要約を見てもらう機会があり、自分の要約した文章が論理的であるかをチェックしてもらうことができ、これが大いに役立った。また、開き直れないと失敗する試験であることは短答と同様なのでこの点は速読での経験が役立った。
たまたま母が書店で手にしたクリエイトのパンフレット。袋小路に迷い込んでいた当時の私が、素直に親の言うことを聞いたあたりからツキもめぐってきたのかもしれない。