
目次
公認会計士とは
公認会計士は、監査及び会計の専門家です。
公認会計士法では、以下のように定義されています。
公認会計士法 第1条
独占業務「監査」とは
独占業務とは、法律により、特定の資格を持つ者だけに、実施が許されている業務を指します。
公認会計士の独占業務である「監査」とは、企業の財務諸表や業績などの情報を検証し、その正確性や適正性を評価するプロセスです。
財務諸表とは
財務諸表とは、広く投資家から資金を集めるべく、会社が投資家に向けて公開する資料です。
「塾に通うお金を出してもらうために、両親に成績表を見せて説得する」というイメージがわかりやすいでしょう。
上記の例における成績表が、財務諸表に該当します。
主に、会社が保有する資産や、経営業績に関する情報が記載されています。
なぜ監査が必要なのか
なぜ、財務諸表を監査する必要があるのでしょうか。
ここで、似た構造のシステムとして、徴税プロセスに着目したいと思います。もっとも厳密な徴税方法は、国家が国民一人ひとりの税金を計算して徴収するというものです。しかし、1億を超える国民全員の税額を計算するのには、膨大なコストがかかるため、現実的ではありません。そこで、一人ひとりの税額は、確定申告というかたちで、自己申告が行われます。自己申告を行う側には、虚偽の申告を行い、税額を減らそうとするインセンティブが働くため、税務当局が申告の妥当性をチェックしています。
財務諸表も同様です。
特定の独立した機関が、すべての企業の財務諸表を作成することが理想ではありますが、現実的ではありません。そこで、各企業の財務諸表は、自己申告の原則をもとに作成されます。しかし、自己申告を行う企業側には、虚偽の申告を行い、より経営状態を良く見せようとするインセンティブが働くため、公認会計士による監査が必要となるのです。
公認会計士の強み
たとえ社会に大きく貢献していたとしても、利益を出すことができなければ、会社は存続できません。「ロマンとそろばん」のバランスが求められます。
会計を学ぶことは、道具としての「そろばん」を手にいれることを意味します。
公認会計士の市場価値が高いのは、この「そろばん」を操る能力に大きな価値があるため、といえるでしょう。
公認会計士のキャリア
公認会計士は、会計に関する知識を活かして、幅広い分野で活躍をすることができます。
主なキャリアパスを、以下にご紹介します。
監査業務
監査法人に所属し、監査業務に従事します。
将来的には、監査法人のパートナーとして活躍することが期待されます。
アドバイザリー
企業やクライアントに対して、戦略的なアドバイスやコンサルティングを提供するアドバイザリーサービスに従事します。
業績向上やリスク管理、経営戦略の策定、税務などが含まれます。
内部統制およびリスク管理
企業の内部統制やリスク管理に関する専門家として活躍します。
企業内でのリスク管理や、内部監査のポジションが該当します。
ファイナンスおよび経営企画
企業の財務部門や経営企画部門で、資金調達、予算策定、経営戦略の策定に従事します。
CFO(最高財務責任者)キャリアとして、近年注目が集まる分野です。
公認会計士試験の主要4科目
財務会計
企業間で比較可能な形で記録をとるべく、会計にはさまざまなルールが定められています。
財務会計では、会計記録を作成する際のルールを学びます。
簿記で学習する内容と地続きになっていますが、現代の複雑な取引に対応するために、簿記よりも高度な内容を学びます。
各企業が異なる基準で財務諸表を作成してしまうと、情報の比較ができません。
会計記録の比較可能性と信頼性を担保するべく、財務会計が必要となるのです。
管理会計
管理会計では、会計データから意思決定に役立つ情報を抽出する手法を学びます。
商品の価格、生産量、年度予算、投資可否など。経営するなかで直面する、さまざまな意思決定に、数字の観点から切り込んでいきます。
経営に直結する科目であるため、経営コンサルティングとも深い関わりがあります。
参考:篠田 朝也, 藤本 康男, 2019年6月, 東京図書出版, 『中小企業のための管理会計 理論と実践』
企業法
会社法を中心に、商法や、金融商品取引法など。
企業法では、企業にまつわる法律を体系的に学びます。
最低限の法律リテラシーを身につけることで、法律関連の問題に直面した際に、自ら対応策を練ることができるようになります。
監査論
監査論では、監査のルールやプロセス、監査証拠の集め方や評価の仕方を学びます。
監査には、不正を発見するだけでなく、不正が発生しにくい組織づくりの視点も含まれています。
これらの視点は、監査業務以外のキャリアを選択したとしても、役立つ武器となります。
公認会計士に向いている人
公認会計士の勉強が自分に向いているかを判断するうえでは、「簿記3級」の資格を挑戦してみるのがオススメです。
いくつかの予備校では、無料で簿記3級の講座を公開しています。
まずは簿記3級の勉強をしてみて、手応えを感じることができれば、公認会計士の勉強に向いているといえます。
以下、CPA会計学院が提供する、無料体験講義の詳細ページです。ご参考までに。
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『会計の世界史』
会計にまつわる制度や知識は、日常生活で触れる機会が少ないため、縁のない話と感じられる方も多いでしょう。
しかし、その成り立ちは、私たちの生活と深く結びついた、動的な歴史の集積です。
『会計の世界史』は、ビジネススクールで会計学を開講する著者による、会計の歴史物語です。
会計の誕生から現代に至るまでの変遷を、誰でも楽しめるように、豊富なエピソードを交えて解説しています。
- 会社の誕生と大航海時代には、深いつながりがある
- 子どものお小遣い帳と会計帳簿。何が違うの?
- 財務諸表がないと、誰がどう困るの?
会計の魅力を、歴史とともに語る本書は、すべての方にお薦めできる一冊となっています。
どうぞご一読ください。
参考:田中 靖浩, 2018年9月, 日本経済新聞社, 『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 』