大事な場面では、誰しも緊張に悩まされるものです。
程よい緊張は自然な体の反応であり、無理に抑える必要はありません。
しかし、緊張をあまりに強く感じてしまうと、本来のパフォーマンスを発揮できない要因となります。
私自身、人前での発表や、大事な試験のたびに、腹痛・吐き気に悩まされるほど緊張に弱い体質でしたが、さまざまな観点から自分を見つめ直すことで、折り合いをつけられるようになってきました。
この記事では、緊張にまつわる実体験を振り返ってみたいと思います。
何か一つでも、お役に立てる言葉があれば嬉しいです。
緊張しやすい人の特徴
緊張に弱い自分には、次のような特徴がありました。
人の目を気にしすぎる
緊張する発表の場面において、気にすべきことは「自分が準備してきたものを正しく伝えられるか」の一点に尽きます。
にもかかわらず「どう見られているか」など、発表のパフォーマンス向上に役立たない事柄に気を取られてしまうと、喋りがしどろもどろになってしまいます。
結果、人の目を気にするがゆえに恥をかくという、本末転倒な事態が生じます。
先のことを考える
本番のプレッシャーを前にすると、真剣に取り組んでいる人ほど、先の不安が頭をよぎります。
「失敗シナリオを想定し、予め対策を用意する」というように、冷静な思考であれば、何も問題はありません。
しかし、過去の私は、
- この発表でうまく話せなかったらどうしよう
- このテストで失敗したらどうしよう
といったように、漠然とした不安に押し潰されるだけで、思考が堂々巡りをしていました。
結果、悩んでも仕方がないことに精神的リソースを奪われ、本番を迎える前に消耗し切っていました。
準備が足りていない
不安は、適切に向き合うことができれば、万全な体制を整えるための、しるべになり得ます。
「不安→用心→成功」という行動パターンをとることができれば、何も問題はないわけです。
しかし、漠然と不安を抱えるだけで、本番に向けた準備に結びつけることができなければ「不安→消耗→失敗」という負の連鎖を招きかねません。
緊張に対処できなかった頃は、私自身、不安に対する向き合い方が下手でした。
緊張に対して恐怖心がある
程よい緊張は自然な体の反応であり、完全に抑えることはできませんし、その必要もありません。
なぜなら、緊張の原因となるアドレナリンは、パフォーマンスや集中力の向上を促すからです。
参考:”全集中”でコントロール!?アスリートだけのものじゃないアドレナリン(NHKスポーツ)
これらの事実を知らずに、心臓がドキドキした瞬間に、反射的に頭が真っ白になってしまう方は、過去の私と同じ悩みを抱えているといえます。
実態を伴わない完璧主義
完璧を目指すことそのものは悪いことではありませんが、実態が伴わずに理想だけが先行すると、想定外の事態が生じた際に、すぐにパニックに陥ります。
理想に見合うだけの準備をするか、もしくは、完璧を目指すことをやめるか。
いずれかを選択しない限り、本番に弱いという自己意識は変えられません。
緊張しない人の考え方
ここからは、私自身が、緊張を克服するうえで役立った考え方をご紹介します。
周りは敵ではないことを知る
他人のスピーチや挑戦を、傍観者として眺めているときのことを思い出してみてください。
時間が過ぎるのをぼんやりと待っている、もしくは、応援する気持ちで見守っていることがほとんどではないでしょうか。
あなた自身が何かに挑戦するときの、周囲の目線も同じです。
周りには、あなたの味方こそいるものの、敵になるような人はいません。
私は、この事実に気づいてから、人の目を意識して失敗することが減りました。
「考えても仕方ないこと」があることに気づく
広辞苑
「くよくよするな!」
親から繰り返し、言い聞かされていた言葉です。
そのたびに「分かってるわ!」と言い返していましたが、その言葉の真意が理解できたのは、ここ数年な気がします。
たとえば「試験に落ちたらどうしよう」という不安は、試験を受ける前から気に病んでも仕方のないことです。
そんなことをくよくよ考えるくらいであれば、合格可能性を1%でも上げるために、机に向かうべきです。
おそらく、これは勉強だけに限った話ではありません。
自分が抱えている不安は、本当に悩むに値する問題なのか。この問いかけ一つで整理することができる悩みは、案外多いのではないでしょうか。
納得がいくまで準備をする
本番で一発逆転を狙おうとすると、緊張に押し潰されます。
結果の良し悪しは、準備次第です。
準備に心を尽くしてください。
少しでも準備不足があると、そこから自信が揺らぎはじめます。
しっかり準備さえしていれば、本番はオマケの世界です。
緊張はあって当たり前
「本番に強い人は緊張しないんだろうな〜、羨ましいな〜」
ピアノの発表会や、人前でのスピーチの前に、よくこんな妄想をしていました。
こうした考えには「緊張=異常・悪いもの」という前提があります。
緊張をなくすことは容易ではありませんが、「緊張はあって当たり前なんだ」と思考を変えてあげることで、緊張によるパフォーマンス低下は避けられます。
緊張に対する恐怖心と、向き合う時間を取ってみましょう。
本番は成り行きに任せる
120%の力が発揮できるに越したことはありませんが、余計な力みは、トラブルのもとになります。
本番を迎えたら、その時間は、何か特別なことをしようと思わなくて大丈夫です。
緊張しないための方法
とにかく準備
準備をすることは、自分が戦える土俵を広げることです。
本番前に緊張があったとしても、しっかりと準備をしている人は、すぐに自分の土俵に持ち込むことができます。
準備をすることが、もっとも本質的な緊張対策です。
考え方などは人によって相性があると思いますが、この事実だけは断言できます。
場数を踏む
ぶっつけ本番で、いきなり結果を残せる人など、存在しません。
カッコ悪くても気にせず、まずは場数を踏みましょう。
自分の中に経験が蓄積されていくと、落ち着いて対処できる範囲が広がっていきます。
イメージトレーニングを行う
場数を踏むことが難しい場合は、イメージトレーニングが有効です。
イメージトレーニングとは、頭の中での予行演習です。
本番の様子を、細部まで想像しながら、感情と共に思い描いてみましょう。
ルーティンを作る
決められた場で、最大のパフォーマンスを発揮することが求められる人は、ルーティンを持っていることが多いです。
ルーティンは、場の空気に飲まれることなく、自分の世界に入るための儀式です。
ご自身の好きなジャンルで構いません。各分野のプロフェッショナルが、どのようなルーティンを持っているのか、一度調べてみましょう。
自分にも取り入れられそうなものが見つかるはずです。
緊張対策に使える「カウント呼吸法」
最後に、ルーティンの一つとしてお使いいただける、オリジナルの呼吸法をご紹介します。
試験前などにぜひご活用ください。
カウント呼吸法とは
カウント呼吸法とは、心身をリラックスさせ、集中力を高めることを目的とした呼吸法です。
クリエイト速読スクールのオリジナルの呼吸法であり、毎回の授業前に必ず実施をしています。
姿勢の準備
ステップ1:背筋を伸ばして、椅子に深く腰かけます。
ステップ2:両足を床につけ、肩や首の力を抜きます。
ステップ3:手はももの上に乗せ、目は軽く閉じて、まぶたの力を抜きます。
呼吸の手順
ステップ1:上記の姿勢のまま、お腹をへこませて体の中の息を吐き切ります。
ステップ2:息を吸いはじめます。その際、息を吸いながら、心の中で「ひと〜つ」と数えます。
ステップ3:空気を吸い込んだら、静かに吐き出していきます。その際、息を吐き出しながら、心の中で「力が抜けていく、力が抜けていく••••••」と唱えます。
ステップ4:息を吐き切ったら再び息を吸います。息を吸いながら、心の中で「ふた〜つ」と数えます。
ステップ5:上記の流れを3分間繰り返します。
3分経過後はゆっくりと目をあけ、首や肩を回して体をほぐしてください。
自分にあった長さで
教室では、上記のように3分間を目安として実施していますが、長さは自由に調整いただけます。
コンパクトに行いたい時は1分、試験前にじっくり集中したいときは5分など、ご都合にあわせてお選びください。
執筆者挨拶
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
あれこれと書いてみましたが、この記事を読んですぐに緊張を克服できる人はいないでしょう。
あがり症が、簡単に解決できる悩みでないことは、私自身も重々承知しています。
それでも、本番前の不安のなか、この記事にたどり着いた人にとって、少しでも参考となる言葉があれば、嬉しいです。
受験生のみなさん。心から応援しています。
劉 智秀 1999年東京都生まれ/栄東中学・高等学校/東京大学経済学部卒/クリエイト速読スクール二代目代表