
目次
短期記憶とは
短期記憶とは、情報を保持する一時的な貯蔵庫のことです。
出典:鈴木 宏昭, 2016年1月, 東京大学出版会『教養としての認知科学』
短期記憶と長期記憶の違い
記憶には3種類ある
記憶は、大きく以下の3種類に分けられます。
- 目や耳から入力された情報を保持する感覚記憶
- 一時的に情報を保存する短期記憶
- 半永久的に大量の情報を保存する長期記憶
出典:道又 爾, 北﨑 充晃, 大久保 街亜, 今井 久登, 山川 恵子, 黒沢 学 (著), 2011年12月, 有斐閣アルマ,『認知心理学――知のアーキテクチャを探る〔新版〕』
勉強における記憶の種類
3種類の記憶を、一つずつ勉強での具体例に置き換えてみましょう。
スタートは感覚記憶から
感覚記憶の例として、教科書を開いて文字を目に入れてはいるものの、内容を理解しているわけではないという状態が挙げられます。
これは視覚情報の感覚記憶で、アイコニックメモリと呼ばれます。
一方、同じ感覚記憶のうち聴覚情報によるものは、エコイックメモリと呼ばれます。
アイコニックメモリは1秒程度、エコイックメモリは5秒程度と、保持される時間が短いのが特徴です。
感覚記憶→短期記憶
感覚記憶のうち、覚えようと意図された情報が、短期記憶に入ります。
授業の小テストの前に集中して英単語を覚えて、その日の終わりにはすっかり忘れているといった事例は、短期記憶に該当します。
短期記憶→長期記憶
長期記憶は長期にわたって情報を保持することができ、容量も大きい点が特徴です。
手元で情報源にあたることが認められない試験では、長期記憶に入った情報を武器に戦うことになります。
短期記憶から長期記憶への移行プロセス
短期記憶の情報は、数十分程度で失われます。
永続的に情報を利用するためには、長期記憶へ情報を送り込む必要があります。
そのためには、覚えるべき情報を意図して繰り返す必要があります。
これをリハーサルといいます。
短期記憶とチャンキング
短期記憶の容量は、人によってある程度決まっています。
しかし、工夫することで、効率よく多くの情報を記憶することができます。
マジカルナンバー
マジカルナンバーとは、短期記憶の容量とされている数のことです。
たとえばN, H, K, T, B, S, L, I, N, Eのような無作為な情報を呈示したとき、人が一度に覚えられる情報量は、4±2とされています。稀に、大量の情報を記憶することができる人もいるものの、ほとんどの人は同じくらいの容量です。
しかし、日常生活では、記憶が得意な人に出会うことがあります。
短期記憶の容量に差がないとしたら、なぜ記憶量に差が生まれるのでしょうか。
そのカギとなるのが、チャンキングです。
チャンキング
チャンキングとは、複数の情報に何らかの繋がりを作り、まとまりとして理解することです。
例として、先ほどのアルファベットの並びを見てみましょう。
N, H, K, T, B, S, L, I, N, Eという、ランダムに並んだ10個のアルファベットを覚えることは困難です。
しかし、NHK / TBS / LINEと区切ってみると、どうでしょうか。
ランダムに並んでいたアルファベットが、意味をもった3つのかたまりへと整理され、格段に覚えやすくなります。
これがチャンキングです。
歴史年号を語呂合わせで覚えることや、数学の公式を導出手順から理解したうえで覚えることも、チャンキングの一種です。
記憶の容量は同じでも、記憶の仕組みを理解することで、必要な情報を効率よく覚えることができるようになります。
参考:道又 爾, 北﨑 充晃, 大久保 街亜, 今井 久登, 山川 恵子, 黒沢 学 (著), 2011年12月, 有斐閣アルマ,『認知心理学――知のアーキテクチャを探る〔新版〕』
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劉 智秀 1999年東京都生まれ/栄東中学・高等学校/東京大学経済学部卒/クリエイト速読スクール二代目代表