体験記

クリエイト速読スクール体験記 '06

速読でTOEIC® 990点獲得!

岡松 英里子

1.「その問題はこっちの答えに変えた方がいいんじゃない?」脳からの声に従う。時間が勝負のTOEICの試験。速読教室でのロジカルテストスピードチェックのように、テンポ良く問題を解いていく。過去に同テストを受けた中で、解答を見直す時間が一番多く取れた。結果、念願の990点獲得。速読開始、3ヵ月目の出来事。

2.「その問題は、こう答えることが求められているんじゃないの?」脳からのささやきに急いで答えを修正する。再就職のための、1時間半の筆記試験と40分の面接試験。筆記試験はメールでの問い合わせに対する返答、社外文書の翻訳など、通常の業務に沿った問題で、膨大な量だった。私が受けたポジションは仕事量が多いため、効率よく仕事をこなす力が求められていると知り合いから聞いていたので、とにかく、問題をすべて解くことが重要だと思った。1週間後に「あなたが一番試験の結果が良かった。採用です」と某大使館人事部から連絡を受ける。100倍強の倍率だった。速読開始、4ヵ月目の出来事。

3.きっかけは職場の同僚との食事会でのたわいもないおしゃべりだった。「今まで自分がしてきた習い事」がその時のテーマ。「私、速読の学校に通ったことがあるの」Y先輩の少し恥ずかしそうな告白に、興味を持った私はすかさずつっこみをいれた。「速読ってなんか宗教っぽくて怪しい団体が多くない? そこは大丈夫だった?」「うん、そこはちゃんとした学校だった。小学生から大人まで、色々な人が通っているの。たまに授業中に何ページ読んだか、みんなの前で言わされるんだけど、小学生よりぜんぜん出来なくて、それが恥ずかしくて途中で通わなくなっちゃったの。もったいなかったなー」大の大人が小中学生らに負けてしまう空間。速読、能力開発という言葉に興味を持っていた私は、関心を持ったものの、仕事、主婦、他の習い事をしていたので時間的に無理だと思い、その教室のことを頭の片隅に追いやった。

4.その後会社を辞め、主婦業とダンナの会社の手伝いに専念することになった。時間をもてあました私はなにか習い事を始めようと思った。無職だったため、趣味のお稽古事というわけにはいかず、お金をかけただけ、元がとれるようなものが良いと思って探していた。その時に昔Y先輩が言っていた速読教室のことを思い出した。「大好きな本を短時間で多く読みたいし、新聞も速く読めるようになりたい。集中力がつくらしいから、今まで歳のせいだと思ってあきらめていたTOEIC満点も取れちゃったりして」と考え、Y先輩に連絡をした。「ずっと前に話してくれた速読教室だけど、絶対に怪しくない?」「大丈夫だよ、ちゃんとした学校だよ。保証する」Y先輩を信頼していたが、用心深い私はダンナを同伴して、無料体験レッスンを受けることにした。

5.無料体験レッスン当日。一時間半の授業はテンポが良くあっという間に終わり、受講後、スポーツをしたような爽快感があった。私はすっかり惹きこまれ、すぐに受講したいと思ったが、一応ダンナの意見も聞いてみた。「君に向いてるんじゃない? この習い事だったらお金を出してもいいよ。俺も時間があったら受講したいなあ」とOKの返事をもらった。

6.早速教室に通いだした。授業では、各自が自分のレベルより少し高いトレーニングを受ける。それがゲームをクリアするようで、とても楽しい。みんなで同じトレーニングをしていて、びっくりするような速さでページをめくる人や、あっという間にトレーニングを終わらせる人がいる。負けず嫌いな私は、自分よりできる人を見つけては「今日のマイ・ライバル」と名付け、その人に負けないように、集中して取り組んだ。そのうち、自分の前回のスコアが「マイ・ライバル」となっていった。

7.常に自分の前回のスコアよりも高いスコアを、と思ってトレーニングに取り組んでいても、結果を出すことはなかなか難しい。気負ってしまい、テンポが崩れると、情けない結果になってしまう。そんな時は、「自分の家族が人質に取られていて、このスコアを出さないと殺すぞ、と脅されている」とありえもしない状況を思い浮かべて、トレーニングに集中してみたりもした。

8.速読を始めてから、なぜかものすごく頭が良くなったような気がし、自分に自信が持てるようになってきた。自分の脳から自分の声で司令が届き、それに従うと良い結果が出るのである。自分のこの能力が社会に使われないのはもったいない、とまで思うようになってしまった。最初はダンナの会社を手伝う目的で簿記の資格学校にも通うつもりだったが、「簿記試験2級合格なんて、そんな小さい夢でいいの? 目指すは公認会計士試験!」と公認会計士の資格取得学校のガイダンスまで受けにいった。しかし、テキストや問題集を見て、現実に引き戻された。

9.講師の中には、司法試験や国家I種公務員試験の合格者がいた。また、生徒には難関の国家試験を目指して通う人や頭の良さそうな中高生もいて、教室に通ううちに、自分も目的をもちたい、達成感を得たい、という気持ちが強くなっていったのだと思う。

10.教室に通う中、本屋さんでTOEIC試験の案内の張り紙、そして以前から勤務したいと希望していた某大使館のホームページで求人案内が目にとまった。TOEICに関しては、かねてより、常に950点前後は取れるのだが、満点はなかなか取れなかった。「まあ、こんなに早く速読教室の効果がでるとは期待できないけど、とりあえず受けてみるかー」と軽い気持ちで、TOEIC試験の申込みをし、大使館に履歴書を送った。両試験当日は、カウント呼吸をしてからのぞんだため、かなり集中することができた。

11.結果は前述の通りである。TOEIC試験満点、某大使館採用とかねてからの夢をかなえることが出来たことにより、さらに自分に自信がついた。

12.良いことづくしのクリエイトだが、欠点もある。一つは、他の生徒となかなか友達になりにくいことである。一時間半の授業では、みな黙々と一人で取り組み、他の生徒と会話することはない。授業が終わると生徒はみな、さっさと帰ってしまう。もう一つは、デイタイム会員のためか、松田先生の授業がなかなか受けられないことだ。他の生徒とトレーニングについての意見交換をし、松田先生の授業をもっと受けてみたいと思っていた。

13.そんな二つの事情を解消できたのが、「文章演習講座」だった。講師は松田先生で、生徒は18名の全8回コース。学校では教わることのなかった、文章の読み方と書き方についての授業が受けられる、ということを他の講師に聞き、早速申し込んで受講した。私が参加した第41期は、下は高校生から上は40歳代まで幅広い世代の人が参加していて、やる気があり、発言する人が多かった。昼寝をしていかないと身体がもたないぐらい、授業の後はへとへとになった。速読の教室に比べて費用が若干高いかな、と思ったが、それに見合う授業内容で、松田先生の厳しいが的確な指摘に、毎回目からうろこが落ちる発見があった。

14.ところが、就職、家事、「文演」に通う私は速読の教室に通う時間がなくなってしまった。「文章演習講座があると、速読をお留守にする人がいるので、それはやめてくださいね。文演も大事ですけど、速読訓練はもっと大事ですからね」という松田先生のアドバイスを聞かなかった私は、文演の宿題の要約で、一番重要な箇所を盛り込まなかった、という失態をおかしてしまった。速読教室に通わなくなった私は脳からの指示が聞こえなくなったようだ。

15.脳は私の司令塔。私の夢を実現させてくれる脳からのささやき声を聴き逃さないために、池袋の雑踏をくぐりぬけ、クリエイト速読スクールにこれからもトレーニングを受けに行く。

16.付録(クリエイト了解済)

文演 第41期アンケート(2006.4.15~6.24)    岡松 英里子

(1)当講座をどんな目的で受講しましたか?

 履歴書、就職のための小論文、ブログ、と自分で文章を書く機会が増えた。そのため、良い文章が書けるようになりたい、との目的で受講した。
 良文と悪文の区別がつけられるようになりたかった。

(2)「文演」を受講して文章への印象で変わったことがありますか?

 文章を書くということは、自分の文章に対して全責任を負わなければならないこと、また、生半可な気持ちおよび知識では書けないことがわかった。
 自分の文章を読んだ人が、分かりやすいと思えるような文章を書こう、と心がけるようになった。

(3)宿題はいかがでしたか。

<最終回授業前>
 原文に忠実になりすぎた。自分の言葉で要約すれば良かった。

<授業後>
 一番重要な箇所を要約に盛り込まなかった。文章を読む自分の力のなさを情けなく、そしてとても悔しく思った。
 自分の書く文章の悪癖に気づかされた。

(4)全体的な感想をお聞かせください。

 文演の授業の後に、速読の体験記を書くことになったが、人の文章を批判することは簡単だが、自分が文章を書くことは本当に難しい、と思った。これからは、失敗を恐れず、毎日少しずつでも文章を書いていきたい。

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全員が最後まで通い続けた文演 --- 技術士(衛生工学部門) ---

矢野 郁夫

理想は晴耕雨読

 50歳を過ぎてから時々焦りを感じるようになった。人生の折り返し地点を過ぎており、何かし忘れているような、これから始まるものが目前に迫っているようなそんな焦りである。それはそれほど遠くない将来、定年後の第二の人生設計への期待と不安からくるように思う。私の場合、その設計コンセプトは晴耕雨読である。晴耕雨読のイメージは、悠々自適、農耕を基本として読書や詩歌、芸術を楽しむというものである。

 晴耕。晴れたら耕す。6年前から畑を借りて休日には野菜作りを趣味としている。畑は100坪ほどあり広い。畑での野菜作りの大半の作業は土を耕すことと雑草取りだ。辛抱と体力ばかりを要求され、過酷ですらある。それなのに地面に接して土の匂いを嗅ぎ、一日中働いて休日を終えると普段の疲れと入れ替えに別の充実したものが心に溜まっている。農耕では収穫の喜びのほかに、別の形で得るものが大きい。晴れた日は身体を動かし汗をかくことだ。

 雨読。雨が降ると畑に出られない。土いじりは出来ない。雨の日は読書が良い。雨音を聞きながら冷んやりした高い湿度に身を委ねていると心が落ち着く。遠い昔の少年のころ、雨の日に読書をしてその物語にどっぷり浸ったことを思い出す。傍らに本があることで、これからの生活は張りのある充実したものへと導かれてゆくのではという期待感がある。また、雨読は学問をするということでもある。ある人に言わせると、学問は究極のエンターテイメントであるという。知的好奇心を満足させれば心豊かになると信じる。

速読に通う理由

 しかし、私の読書の現実はそんな理想からかけ離れている。仕事の忙しさを理由に実用に供する本しか手にしてこなかった偏りからか、読書が得意ではないのである。本当の読書の醍醐味を知らないと思える。目の衰えないうちに出来るだけ本を読んでおきたい。読書の醍醐味を知っておきたい。そんなときクリエイトのホームページに出会った。

 このホームページの中には多くの体験文が載せられている。体験文のほとんどには速読の成果は当然として、予想以上の成果が書かれている。自分で驚く理解度だったり、読書に没頭する喜びだったり、仕事が効率的に速くなったなどである。思わぬ成果を得てハマルとか、ブレークスルーといわれる状況を体験している。達成感を得る喜びは癖になり、ますますのめりこむ、そんな状況が読み取れた。
 実際の速読練習の過程では生々しく自分の能力の現実に直面し、自分自身との戦いを強いられる。ここでは乗り越えるべき目標は自分の中にある。競争社会が問題視される中で、真の競争相手は自分だというテーゼが面白い。
 私もそれを体験したいと思った。

 この教室のトレーニングは、科学的であり論理的である。トレーニングジムで身体を鍛えるように、視覚機能や脳細胞を鍛えることで速く読むことを可能にして行く。視野を広げて文字・文章を見る、その文字・文章など語の呼び起こす心のイメージに注意を向けて、そこから理解・記憶に結び付けて行こうするものである。
 「矢野さん、新書だったら訓練しだいで30分以内で読めるようになりますよ」松田先生の言葉は今でも私の脳に焼き付いている。その時点で私は「それはすごい。でも、そんなに速くならなくていいな」と思っていた。そのせいだろうか速読訓練の成績は停滞している。軽めの新書でも1時間以上かかっている。年齢のせいもあるだろう、まだ満足のいく読書速度には到達していない。視神経、関連する脳細胞が鍛えられれば速読は上達するはずなのだが。通い始めて8ヵ月、諦めないで続けようと思う。いつか自分でびっくりする体験が待っていることを楽しみに。

文演を受けた理由

 文演を受講した理由は、文章の仕組みを良く知ることで、速読の上達に繋がると思えたからだ。
 私はビル管理会社に勤務する、建築設備を専門とする技術者である。業務の性質上、多くの業界の様々な人々との交流がある。関係者間の的確なコミュニケーションを図るためには、読みやすい正確な文章が求められるし、また、異業種からの多くの情報の収集も必要である。速く読むこと、速く正確に的確な表現で書けることは仕事の質を向上させる。文演を受講することで文章への興味が増して文章を好きになれば、仕事はさらに楽しくなると思えた。

文演は自己表現のための確かな道具

 文演から学んだことは、文章を書くには才能より前にまず技術があって、その技術をマスターすることで文章を楽に分かりやすく書くことが出来るようになるということである。文章には読みやすく分りやすいものとそうでないものがある。今まで、それはなんとなく感じていたのだが、言葉でうまく説明できないでいた。

 文演の教材には受講生が書いた多くの文章が使われている。それらの文章は誰しも陥りそうな初歩的な欠点のある文章から、上手な文章の中に高度であるがゆえの問題点まで多くの例題文が使われる。それらの欠点、問題点を見つけ出すことが学習なのである。初めのうちは、その悪い要因を思うように指摘することが出来なかった。それらを一つ一つ具体的に解説されることで、良くわかるようになった。教材の中の文章には上手で、思わず引き込まれるうまい文章がある。だが、そんなところにも落とし穴がある。レベルの高い例題文になると、どこに問題点があるのか説明を受けるまで分からない。みんなとディスカッションし、松田先生の解説でやっと理解できるようになった。

 なるほど、自分で文章を書く場合にこれら要点を意識的に心がけるようにしよう。文章は素直に順序良く書くことでその人となりが出て自然に個性的な文章になるものだと感心した。個性を出そうなどと肩に力を入れてはいけない。対象を良く観ること、経験を尊重して、作文技術・手順に素直に従うことこそ重要だと思えた。ここで学んだことは、文章を書く上で心がけなければならないことばかりであった。文章というものは自己を表現する道具として適正に使うことで想像を超える力になると改めて思えた。

宿題との格闘
(最終回授業前)

 全8回の授業で宿題は1回だけである。しかし、これが難物であった。約8,000字のテキストを750字に要約するものであるが、この約8,000字、中身が濃くて端から端まで重要に見えて、すべての内容に味があり、重要に思えるのである。これまで私の普段の生活で要約をする場面はあまりない。そもそも要約の目的、意義を考えたことなど全くなかった。目的意識が極めて希薄なのである。どうすればよいのだろうという感じである。取り組み始めて、要約をすることは文章を凝縮することで、作者の意図を理解し、受け入れることだということに気づいた。要約は、技術であり、手順があると松田先生はおっしゃる。
 技術、手順は職業柄、私が大切にしている言葉なので、こんな場面で登場することが嬉しかった。文章を読んで手順に沿って内容を把握し、キーワードを含む文章に線引きをする。だが、これは重要ではないのか、この文も入れたい、この文は気に入った言葉だ。などと考えていくとなかなか短くならない。埒があかないので、思い切って、どんどん削ってみる。そこで、パソコンに打ち込んで文章になるようにつなげてみる。そうすることでやっと要約らしい形になった。

(授業後)

 講評での松田先生の一人ひとりへの指摘は、まったく予想もしないものだった。私の場合、あれだけ考えたにも関わらず文章の読み方がまだ浅いと思った。言葉の意味や使い方を大切にしなければとも思った。
 それにしても文章は怖い。言葉を大切にして常識をもって隙のない文章を心がけなければならないと思った。

予想以上に楽しいもの、ためになるもの

 「文演」は予想以上に楽しかった。私は53歳で最年長、最年少は海外留学計画中の利発な女子高3年生。司法試験を受験中の人、公認会計士を目指す人、文章と何らかの形で格闘している人ばかり合計18人、こんな環境で学校時代に最も苦手な国語に関する講義を受けたのだ。緊張した。文章について当然学校で教えられてもいいのにと思えることを、ここで初めて聞くことが新鮮だった。若い人たちから、思いもよらぬ鋭い意見が多く出て感心させられた。刺激的で少し悔しかった。予習に十分時間をかけて出席したときは楽しかった。予習に時間が取れない授業では内容を見失いそうなこともあった。

 幸運にも、欠席せずに受講できたことは良かったし不思議な経験になった。18人全員が最後まで出席した。この授業は出席したくなる工夫が随所になされており、進化し続けているのだろうと思った。これからの私の文章が変わる予感がする。実際、業務で文章作成を楽しめるようになったし、また、手際よくなったように思う。文章に対する心構えが変わってきたようだ。
 さらに、速読の上達につながることも期待している。
 こんなに有意義な講義はこれからも続けていただいて、一人でも多くの人に感動を届けていただきたいものだ。心から応援しています。

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速読と文演で読書にメリハリが --- 会社員 ---

高橋 博明

 クリエイト速読スクールに通いはじめてから1年半になり、受講回数は90回を越えた。体験記の依頼を受けたのは2回目となる。

 訓練の結果に一喜一憂していた最初の頃に比べると最近は落ち着いて受講できるようになった。40回目位までは訓練の結果が気になって仕方がなかった。個人差はあるのかもしれないが、90回となるとそう簡単に数値が上がらないとわかるので、今はあまり気にしていない。わりと順調に伸びてきた分だけ訓練も厳しくなっている。しかし、結果は気にしないが、目標の数値は決めて臨むようにしている。目標といっても前回より少しでも数値を越すように心掛けるだけ。たとえ下がったとしても気にならないので、気分的に余裕を持って受講できる。気がつくと少しずつではあるが、今でも着実に成果が表れている。

 1回の速読訓練90分は大きく3つに分けられる。序盤は視野を拡大する訓練、中盤は論理的思考力やイメージ力を高める訓練、終盤は読書訓練である。

 序盤はシートを使った訓練が中心となる。シート訓練により、ページ全体が視界に入り、行単位で文章を捉えることができるようになる。訓練では大まかでもなるべく全体を意識することが大事である。ランダムシートブロックパターンシートでは、文字の特徴をイメージしてページ全体を見るとイメージしている文字が浮かび上がるような感覚になる。文字によって難易度はあるが、私の場合は比較的見やすい漢字の「夏」やひらがなの「あ」でこの感覚をつかんだ。

 中盤では、ペンをもって用紙に記入する訓練に入る。スピードチェックは前半で目の動きがスムーズになった後に行う訓練で、速さだけではなく正確に認識できているかどうかの確認になる。手で紙に記入しながら頭では次の問題に取り組み、同時に二つの作業を行う。資料から即座にキーワードを探し出す時や瞬時に概要を把握したい時などに役立っている。
 中盤の訓練で後半につながる重要なものとしては、イメージ記憶訓練がある。これは時間内に全く関係のない二つの単語を関連づけ、記憶した単語を書き写す。単語のもつ様々なイメージを一瞬で引き出さなければならないため、感受性や好奇心の強い人が得意だと思う。行ごとに文章を読むと複数の単語が目に入ってくるので、これらを瞬間的にイメージで結びつける作業が必須となり、特に小説で情景やストーリーなどを頭に描きながら読むときに活きてくる訓練である。

 終盤ではいよいよ読書の訓練に入り、読書スピードを上げるには欠かせない倍速読書訓練を行う。時々、同じ文演を受けた人たちや始めたばかりの受講生と速読の話をすることがある。訓練回数の浅い人たちはこの訓練を難しいと思っている人が割といて、他の訓練は伸びてきているが、なかなか読書スピードが上がらないといった話を耳にする。倍の速さで読むと内容を理解できなくなるので、そのことが不安になるという理由が多い。私の場合、訓練だと割り切り、内容の理解よりも、目標のページを決めて多少わからなくてもとにかく目を通すことにしている。現在の訓練時の読書スピードは理解度A―(理解はできるのだが、急いで読んでいるという感覚)で約20,000字/分であるので、倍速になると40,000字/分である。1秒間に約1ページ読んでいることになる。もちろん、内容は一部しか理解できなく、本によっては、ほとんど理解できないこともある。しかし、はじめて間もないころは倍速にして2,000字/分でも理解できなかったことを考えると、当初からは想像できなかった理解速度になってきている。

 たまたま教室で読んだ『上達の法則』(岡本浩一著、PHP新書P221)に下記のような記述がある。

 水泳で最近用いられている練習法に、まずスピードの感覚だけ実感させるという方法がある。選手にロープをつけ、プールのコースにそって、クレーンで引っ張るような装置を作る。この装置を使って、その選手の目標タイムでまず引っ張るのである。そうして、自分が目標としているスピードで進んでいるときの水の抵抗の感覚など、さまざまなものを経験させるのである。 この訓練法の導入によって、水泳の訓練法は画期的に進んだということである。

 まさに倍速読書訓練と同じ発想の訓練方法である。最大限の負荷をかけ、速読でいう倍速を体感することは重要なトレーニングである。ただ、速読において難しいところは、最も負荷をかけるべきところであるが、自分でブレーキをかけてスピードを調整できてしまうことである。私も日によって集中力の差があり、反省すべきところである。

 30回を過ぎた頃に文章演習講座(文演)を受講した。速読とは違い文章を何度も熟読し、筆者の意図を読み取ることを訓練する。初めのうちはどうしても自分の主観を入れて都合のいいように解釈をしていたのだが、文演が終わる頃には、論理的に文章を構成するための基本を身につけることができるようになった。しかし、受講するとわかるのだが、文章のみで自分の考えを的確に伝えることがいかに難しいか、また、文章を残す責任がいかに大きいかを身にしみて感じるようになった。読書だと一瞬で読まれてしまうのに、いざ自分が書こうとすると初めの一文を書くのになかなか手がつけられない。こういう感覚を今まで感じたことはなかった。

 速読と文演を通して読書に緩急、メリハリをつけられるようになった。スピードを上げられる箇所、熟読を要する箇所を意識し、ただ漠然と読むだけということはしなくなった。今は高い理解度を維持しながら、いかに速度を上げていくかが課題である。

 入会当初の目的であった、読書の方法を身につけてコンプレックスをなくすこと、読書スピードを3倍程度まで上げることは20回位で十分に達成できた。今までいかに本を読んでいなかったということかもしれないのだが、この1年半で読んだ本の数は生涯で読んだ数を軽く越えている。

 いつまで続けていくのか。今までの訓練で身につけた技術、感覚はそう簡単には低下しないことはわかった。私の場合、通う目的ははっきりしている。もっと速く読めるようになることである。今はできるだけたくさんの本を読み、読書を通じて様々な作家の考え、価値観に触れたい。時間があればもっと読むことができるのだが、現在は余裕を持って読書する時間がほとんどない。限られた時間でいかに効率的に読むことができるか。そのためには、もっと速く読めるようになるほかない。この気持ちで今後もクリエイトを続けていくつもりである。それは、スポーツクラブで地道に基礎トレーニングを積むのと同じだと考えれば納得してもらいやすいかもしれない。

2005年体験記『読書が心底楽しくなった』

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アル中から私を救ったクリエイト --- 公務員 ---

安藤 大造

 十数年間、アルコールに浸っていた。日本酒に換算して、1日最低1升は飲んでいた。
 平成10年5月、重度のアルコール依存症と診断され、断酒しなければあと5年で死ぬ、と医者から脅かされた。この病気の特徴として「脳萎縮」がある。MRIで自分の脳を確認した。医者の説明を聞くまでもなく、スカスカになっているのがありありとわかった。牧伸二さんのセリフを借りれば「あ~あ、やんなっちゃった……」である。ショックだった。

 平成15年1月9日に断酒を決意した。しかし脳萎縮状態のせいで、物忘れがひどかった。子供の頃に覚えた掛け算の九九もほとんど忘れてしまっていた。このままではいけないと思った。少しでも脳の力を取り戻したいと考え、川島隆太先生の著した音読・計算ドリルに挑んだ。「音読ドリル」は、日本昔話などの文章を速く読む。私はもともとひどい吃音であり、加えてアル中の症状により舌が回らず、1行読むのもたいへんだったが、机にかじりつきこの困難と戦った。そして、日常会話ができるところまで回復した。「計算ドリル」は1ケタの加減乗除の計算を速く行う。当初は九九のほとんどを忘れていたのできつかったが、1ケタの計算を暗算でできるところまで回復した。日常生活を送る上での必要最小限の脳力が回復したと思った。しかし、人間というのは欲張りなもので、さらに脳力を向上させたいと思っていた。
 平成17年2月、新聞広告の中から「ユーキャン 新・速読講座」というものを見つけた。
 速読については、断酒前であるがそれまでも、いくつかの教室に通ったことがあった。きついヨガ体操を強制して、超能力をわきたたせようとする教室。線香臭く宗教的色彩の強い教室。目標読字数に到達できるまで外に出してもらえない教室。高い教材を買わされ、高いセミナーに参加させる教室など、どれも飲まずにはいられない飲酒欲求をかきたてる内容が多く、すべてに長く続かずドロップアウトしてしまっていた。

 ユーキャンの通信講座は値段も手頃であり、まあ、まただまされたつもりでやってみよう、と思い、受講を開始した。多少しんどくても、全55回を最後までがんばって続けてみようと決意した。
 教材にはBTRメソッドについて以下の導入テキストがついていた。
 「マンガなぜ速読ができるのか」では、松田先生と受講生とのやりとりからプログラムの目的がわかりやすく理解できた。「速読体験レッスンビデオ」では、速読初体験の人たちとともに、スタッフの方が参加しており、両者の数値の差に驚かされた。しかし、がんばればスタッフの方の数値まで到達できるのでは、との目標が芽生えた。次に松田先生からのBTRメソッドについての解説が収録されており、プログラムの内容を論理的に理解できた。これらの教材のおかげで、通信学習をスムーズに進めることができた。

 不思議なことだが、きついと予想していたトレーニングが、割に楽しくできることに驚いた。その楽しさのためか、いつしか飲酒欲求が全くなくなり、最後のレポートを必ず提出しようとの目標へ向け、自主トレも含め、毎日のように机に向かった。その成果が出たと感じられたのは、平成17年7月、サービス介助士2級(日本ケアフィッター協会主催)の試験に合格したことであった。名前もまともに書けなかった状態のときを考えれば、まさに奇跡であった。

 感動した私は、さらに可能性を求め、「ユーキャン 新・速読講座」を主催しているクリエイト速読スクールへ通学することを決意した。通信講座と格闘していたおかげだろうがスピーディーな教室のプログラムにもすんなりとなじめた。
 しかし、教室には優秀なビジネスマンや大学生、高校生がいる。彼らはどのプログラムでも高い数値を出す。受講の都度、私が目標としているのは、訓練のどれか1つについて彼らより高い数値を出すことだった。たまにそれが成就すると、この上もない興奮と喜びに包まれる。脳が若返ったようなうれしい気持ちになった。しかし、ロジカルテスト、イメージ記憶は、脳萎縮の影響であろうか、なかなか数字が上がらずもがき続けた。この2つのメニューは大キライであった。その後、講師の方たちからアドバイスをいただき、キライな2つのメニューが次第に楽しくなり、数字が伸びてきた。とくにロジカルテストはある時期から突然解くスピードが上がり、Cレベルまでできるようになってきた。

 生まれつきの弱視のため、シート訓練はきつかった。当初はシートに顔がくっつきそうなくらい近づけて見ていた。松田先生が「安藤さんなりでかまいませんから、できるだけ離してみるように」とアドバイスをくれ、また、視野を広げるサッケイドシートの訓練により、少しずつではあるが、目とシートの距離が離れていった。サッケイドシートは現在、100前後の数値を毎回出している。かなブロックパターンシートは当初は一字一字を目でなぞっていた状態で、なかなか数値が上がらなかったが、最近では少しずつ全体を見れるようになり、文字が目に飛び込んでくるのを実感できるようになった。
 私は数字が大キライである。しかし、仕事で数字を処理することが多いことなどから、簿記の勉強を始めた。数字ブロックパターンシートスピードチェック(数字版)の訓練をもがきながらも続け、何度か投げ出そうとかと思った苦手な数字処理学習を歯をくいしばって継続した。しだいに簿記の勉強がしやすくなり、晴れて平成17年11月、日商簿記3級に合格した。主治医も「これは奇跡だ」と、驚いていた。
 クリエイトのトレーニングは脳に刺激を与えるものだから楽しいが、私にとってはつらくもあった。だが、結果が出るというのはこの上なく嬉しいものだ。

 さらなる可能性へ向け、「文章演習講座」を受講した。
 何回か受けるうちに、東大生や司法試験挑戦者という高いレベルの人たちが受講していることがわかった。これではついていけないな、と思った。しかし、松田先生の解説はわかりやすく、様々な環境の人たちにも共通して理解しやすいものとなっている、と感じた。松田先生は全ての受講生に対して分け隔てなく、同じようにアドバイスしてくれた。おかげで様々なレベルの人たちと切磋琢磨できる自信がつき、自分の文章作成についての理解も上がっていった。文章の流れ方やルールをハッキリ知ることができたので倍速読書訓練の理解度までが向上した。
 他に良かったこととしては、作家や新聞記者というプロの書き手の書く文章は、何と読みやすいのかということを初めて知ることができた。貴重な資料をいただいたことや論理をつかまえる訓練ができたこと、他の受講生の意見をうかがえたこと等々、「文演」は私の物の見方や考え方に大きな影響を与えてくれた。

 アルコール依存症で入院したり、断酒とそのリバウンドで10日間何も食べずに連続飲酒等々を繰り返し、生死の境をさまよった。今、生きていることによろこびを感じている。それはクリエイト速読スクールが私に生きる目標と価値と可能性を与えてくれたからだと思っている。