神戸法科大学院合格体験記。苦手だった適性試験を乗り越えるまで | 速読ナビ

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神戸法科大学院合格体験記。苦手だった適性試験を乗り越えるまで

更新日:2024年4月20日 公開日:2023年7月5日

 この記事は、第5回新司法試験に合格された、皆川さんによる速読体験記です。

第5回新司法試験合格 皆川 佳代

法科大学院受験に立ちはだかる適性試験

 私は適性試験がひどく苦手だった。適性試験とは、法科大学院受験をするために必ず受けなければならない試験であり、論理パズルや大量の長文読解を限られた時間で解かせることで事務処理能力や理解力を試すものだ。

 2006年度法科大学院受験のため適性模試を初めて受けた際、なんと100点中16点しかとれず呆然とした私は、予備校で設置している適性試験講座を受講し、模試も10回受けて訓練した。しかし、本試験結果は42点で、平均点より14点も低かった。

 幼い頃からこのような知能テストの類は大嫌いで、できる限りそういうものから逃げてきたというのに、今さらなぜこのような目にあわなければならないのかと世を恨んだ。教わったからといって出来るようになるものでもなく、自分の知能にかかっている問題なのだから伸ばしようがない、もうどうしようもできないと思った。

 家族との夕飯時に、「こんなのできないよ!!!!!」と泣きわめきながら問題を破り捨てた。母と祖母が目に涙を浮かべて、苦しそうに私を見ていた。家族全員を真っ暗な雰囲気にしてしまった。

 途方にくれながらも、私には法律家に求められている能力の一つが、法律家を目指す人達の中でも相当劣っていることを自覚せざるをえなかった。

 この成績では書類審査(一次試験で適性試験の成績等を審査して、法律試験を受けさせる前に足きりをするタイプの審査)で落とされると確信し、書類審査をしない大学院(慶應、中央、上智)だけを受けたが、すべて落ちた。

 もっとも慶應には、私と同じ適性試験の点数でも法律の実力がついていた友達は合格したので、私は法律もできなかったために落ちたことが分かった。このまま入試を続けるより2007年度入試に向けて適性試験の勉強と法律の勉強とをしようと考え、2006年度受験はここで終わらせた。

 自分には適性試験に必要な事務処理の能力と法律とが足りないことは明白だが、どちらがどれくらい足りないのか分からなかった。井戸の底の底まで突き落とされたような、先の見えない暗く重い心中で大型書店へ行き、何か糸口を見つけようと目についた本をひたすら買物カゴに放り込んでいった。

 帰宅して一冊一冊見てみると、その中にクリエイト速読スクールの黄色い本『速読らくらくエクササイズ』があった。そこには司法試験合格者の体験記が載っていた。……おっ!?

 体験受講をしてみることにした。体験受講したあと、松田先生に「体験の数値を見る限り、平均よりはずっとできているから情報処理能力はこちらで磨けばよいと思います。専門の法律の勉強をもっとがんばってみてください」と言われた。

 その言葉を聞いたとき、井戸の底からうっすらと光が見えたような気がした。どちらも全くできないわけではないようだ。「情報処理能力」はクリエイトで伸ばし、私個人としては法律をもっときちんと勉強すればよいのだ!

 その後1年間、クリエイトで速読トレーニングと文章演習講座の両方を受講した。
 その結果、2007年度入試適性試験で70点とれ、平均点を6点超すことができた。法律家を目指すみんなに並ぶという目標を達することができた! そして、必死に勉強した法律も実り、神戸大学に正規合格できた。

 私のクリエイト体験は受験生活と一心同体であったため、受験生活の経過と供に書いていこうと思う。

適性試験の突破口

 私は適性試験の文章が読めなかった。ページ数が多いので、最初に書かれていた内容を忘れてしまい、何度もいったりきたりしなければ頭に入らず時間不足という始末だった。

 ところが、速読に通いだしてからは文章をイメージに置き換えて読むようになったので、速く良く理解できるようになった。また、文章の構造が頭の中でくっきりしてくるようになった。イメージ記憶訓練ロジカルテストが効果的だった。

 このことから重要なことに気づいた。それは、私は長期記憶は優れていて、いったん飲み込んだらどんどん応用が利くが、それに至る前の短期記憶能力が欠落していて、だから文章をすぐ理解できないということだ。それを強化するには文章をイメージに置き換えることが重要で、クリエイトのトレーニングはまさにその能力を進化させる訓練であった。

 さらに、文演で接続詞の正しい使い方や、文章の書き方を教わったことで、並べ替え問題がスッと解けるようになった。

法科大学院受験当日

 文演で一般人が書いた文章をたくさん読まされたことで、採点者の視点で文章を読むことができた。

 読点(、)が多い文章はとても読みにくかった。また、形式面で指定されたとおりに書けていない文章もあり、これに対しては「形式さえ問いに答えないのだから、こちらの話をまともに解釈できやしないだろう」と切り捨てたくなった。

 そしていずれの文章とも、「まだいくつも見なければならない文章があるときに、こんな文章をゆっくり読んでいられるか!」という気持ちになった。おそらく採点者はこういう気持ちで数多くの答案を読み飛ばしているのだろう。これを体験できて本当に良かった。

 慶應を受ける1ヵ月前から法律の勉強で精一杯になってしまい、速読に通わなくなった。慶應本試験では緊張しすぎてあがってしまった。大学時代にお世話になった教授の顔が浮かび、彼らに採点されるのだから絶対に失敗は許されないのだと自分で自分に圧力をかけてしまい、もうどうしようもなく真っ白になってしまい、思うように書けなかった。

 慶應に入りたいという気持ちが強すぎて、何もかもぶっとんでしまった試験となった。帰りの電車の中で悔しくて大泣きした。地元に着いたが家に帰れず、ふらふら失踪して家族に心配をかけてしまった。結果は補欠の下の方だった。

 次の週に同志社を受けた。緊張しないようにリラックスしようと思って受けた。試験後、絶対に受かったと思いながら問題文を見直して撃沈した。今度はリラックスしすぎて、民法の問題文の一部を読み落としてしまっていた。「請求できるか。できないならその理由を、できるならその理由を、それぞれ述べなさい」という問題だったのに、「できない」と考えた私はその理由しか書かなかったのだ。これでは配点がないので落ちたと思ったが最終的には繰り上げ合格となった。

 しかし、このようなミスは絶対してはならない。契約書に目を通すことが仕事である弁護士を目指しているのに、問題文を読み落とすという有り得ない失敗をするなんて。この失敗は、今後の教訓としなければならないと思った。

 この経過をじっと見守っていた松田先生が心配して、「あなたの強みはクリエイトを知っていることです。国立も受けるなら速読に週1は通ったらどうですか? 過去に合格した人達は直前まで通ってた人多かったですよ」と声をかけてくれた。

 法律うんぬんよりも、本番での集中力が足りないのだと反省して、2ヵ月後の神戸大入試に向けて再び週1のペースで速読へ通い始めた。

 神戸大学の試験本番の朝、問題文を読み飛ばすような同志社の二の舞にならないように、視野を広げかつ脳がリラックスできるヘルマンシートランダムシートをやってから試験会場へ向かった。

 神戸大の行政法の試験は長文の資料を参考にさせながら書かせるため、特に効果があった。その他全ての問題において、問題文の読み飛ばしがないか何度も確認しながら書いた。クリエイトでの日頃の訓練のおかげで、文章を書きながらもいろいろなことに気を配ることができるようになっていた。

 また、イメージ記憶訓練のおかげか、問題文にサーッと目を通しながら、まるで映画を見ているかのように問題文に書かれている状況を把握することができた。時間の節約にもなるため、見直しの時間も多くとれた。速読訓練はこのようにして私を助けてくれた。

速読と文演と松田先生の指導が絡み合って力がついたこと

 神戸大学の一次試験は、大量の指示を注意深く読ませた上で「ステートメント」を書かせるというものだった。この一次試験で、出願者774人中の321人が落ちた。私がその中でも落ちない文章を書けたのは、松田先生が私の性格面に対して正直に指摘してくれたからだ。

 「私はあなたが弁護士になっても、あなたに依頼したくはありません。なぜなら軽率で不注意だからです。あなたの態度からは、人の生命や財産を守るという自覚がまるで感じられません。性格は文章に表れます。そこを意識して修正していかないと……」

 人によっては松田先生から離れていくかもしれない痛烈な言葉だが、はっきりと指摘してくれた。私はとても嬉しくて、この言葉を私の日記の『忘れない助言』の欄に書き記した。そのときから、文章を読む、そして書くことに対する私の意識が変わった。その結果、生活態度も変わってきた。

 それに伴い、私の脳に変化が起こった。その変化に父が気づいて、ある日の夕飯時に私に言った。

 「前まで佳代は、『ごじゃっぺ』だった。俺の田舎の言葉で、要領を得ずごちゃごちゃ話す頭の悪い人をごじゃっぺというんだけどね。佳代はなにか説明しようとすると、あとあと自分が何を話しているのかわからなくなっていた。例えば、Aに関して話していても、途中で枝葉の部分に関して突然何かを思いつくとそのままBという話をし始め、そしてまた途中で枝葉の部分に関して思いついたCという話をし始める……というふうに、結局Aとは何ら無関係な話になって終わる始末だったんだよ。ところが最近そうじゃなくなったね。どうして?」と。

 これは私も感じていたことだった。速読でロジカルテストイメージ記憶訓練をしたことや受講中に本を沢山読んだことに加え、文演で文章の書き方を教わった後、神戸大一次試験用に問いに答える文章を必死に作成した結果、頭の中で自分の話の構造が見えるようになっていったのだ。同時に、他人の発言の中の論理矛盾が分かるようになっていった。私に欠落していたこれらの能力が目覚めだした。

 これを父に話すと、「やはりクリエイトかぁ!! 出会えてよかったなあ! 佳代はクリエイトに行ってから本当に良くなったよ。ごじゃっぺのままだったら普通に就職しても大変苦労したと思うけど、自分の能力を超えるものを目指したからこそ進化できたんだろうな」と言われた。

 「あのどん底の中、クリエイトを探しあてて通い始めたこともお前の能力だよ。自分の弱点と正面から向き合って、それを突破しようとせずに止めてしまう人達もいるんだからね。佳代がクリエイトを見つけるまで、そしてクリエイトに通いだしてからの姿を『お父さんの体験記』という題で一筆書きたいなぁ!」と笑っていた。

 司法試験という私の能力を超えるものに挑戦する過程で必要とされている一つ一つの能力を強化する努力をしていくうちに、私は大きく成長できた。クリエイトがその一つ一つを手助けしてくれた。クリエイトなしには進化できなかった。

 最後に、クリエイトの先生方に大変感謝している。
 A先生にはよく相談にのってもらい、太陽のような笑顔でいつも励ましてもらった。私の表情を見ては私の精神状況を察して元気づけてくれた。

 また、神戸大受験のため新幹線に乗りこむ前にボストンバックを引きながら速読へ行った際、桑田先生と女性スタッフの方がクリエイトのエレベーター前までわざわざ出てきてくれて、「静かな気持ちで頑張って!!!」と送り出してくれた。2人の声援にとても力づけられた。

 神戸受験から帰った後も、「皆川さん今回は本当にいい顔してるわねぇ! 受かってそうね!!」と先生同士で嬉しそうに話しているのが聞こえてきた。
 そして松田先生は、私の神戸合格をブログにまで書き込んで喜んでくれた。

 たくさんの生徒がいるのに、たかが一生徒を先生方はこんなにも大切に思ってくれていると思い、感謝の気持ちで一杯になった。熱意と愛情あふれる先生方に支えてもらったから、止めないでこられたし、進化することができた。

 本当にありがとうございました。

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