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レジリエンスとは。樹木のたとえで意味を簡単解説

更新日:2024年4月20日 公開日:2024年2月1日

レジリエンスとは

 レジリエンスとは「ストレスに直面しても、耐え、回復し、成長する能力」のことです。

 この定義は、米軍におけるレジリエンスの要約です。

 軍隊は集団で任務を遂行する組織であるため、レジリエンスという言葉には、個人の視点だけでなく、組織の視点も含まれています。

 出典:藤原 俊通 (編), 2020年5月, 遠見書房,『自衛隊心理教官と考える 心は鍛えられるのか──レジリエンス・リカバリー・マインドフルネス

レジリエンスの意味〜樹木のたとえ〜

 レジリエンスは、樹木の強さにたとえられます。

 樹木の強さは、個々の樹木の強さと、樹木が群生している森の強さに分けて考えられます。

 個々の樹木の強さとは、嵐のなかでも微動だにしない太い幹のような強さや、強風に逆らわずに柔らかく受け流す柳のようなしなやかさ、自らを変化させることで厳しい環境で生き延びる適応力などが挙げられます。これが個におけるレジリエンスのイメージです。

 一方、森の強さとは、樹木が強く育つための環境とその恒常性を指します。たとえば、森は樹木のために、水と養分を土壌に蓄えることができます。多少の乾季であれば耐えられる環境を備えているのです。そのほかにも、樹木を強風から守る役割などが挙げられるでしょう。これが、組織におけるレジリエンスのイメージです。

 レジリエンスとは、個の力を超え、組織や集団といった個人を取り巻く環境をも包摂する概念であるといえるでしょう。

 参考:藤原 俊通 (編), 2020年5月, 遠見書房,『自衛隊心理教官と考える 心は鍛えられるのか──レジリエンス・リカバリー・マインドフルネス

レジリエンスが注目される背景

 レジリエンスが注目される背景には、働く人のメンタルヘルス問題があります。

 2021年11月から2022年10月までの間で「メンタルヘルス不調によって連続1カ月以上休業または退職した労働者がいた事業者」の割合は13.3%となっています。

 出典: 厚生労働省 令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

 こうした背景から、トラブルが起きたときや不利な状況に置かれているときに、メンタル不調にならないことが重視されるようになっています。

 対策として「心を強くする」ことが求められがちで、現代は「心の強弱」を評価される時代であるともいえるでしょう。

レジリエンス向上は個人だけの課題?

 しかし、メンタル不調の原因を「心の強弱」のみに求めることは危険です。

 樹木のたとえのように、メンタル不調は、個人の「心の強弱」だけでなく、その人を取りまく環境にも大きく影響を受けます。

 メンタル不調者を弱者として排除するだけでは、メンタル不調者を生み出すレジリエンスの低い環境がそのままになる可能性があります。

 原因の大元であるストレス環境そのものに介入し、個人を取り巻く環境自体のレジリエンスを高めることが重要です。

 出典:藤原 俊通 (編), 2020年5月, 遠見書房,『自衛隊心理教官と考える 心は鍛えられるのか──レジリエンス・リカバリー・マインドフルネス

ビジネスシーンでレジリエンスを高める例

 ここからは、レジリエンスを高めるためのストレス環境への介入方法をご紹介します。

 会社等の組織だけでなく、個人でも実践することができます。

不測の事態に備えた計画を作る

 不測の事態に備えた計画には、余裕があります。

 余裕があれば、何かトラブルがあったときにも落ちついて対処することができます。このような状態は、レジリエンスが高いといえるでしょう。

 ここからは、不測の事態に備えた計画を作るための2つのポイントをご紹介します。

「計画錯誤」に対処する

 計画に余裕を持たせることの重要性は認識しつつも、結局締め切りに慌ててしまうという経験をしている方は少なくないでしょう。その原因の一つとして考えられるのが「計画錯誤」です。

 計画錯誤とは、何かを完了させるのに必要となる時間と労力が少なく見積もられることです。

 希望的観測をもとに計画の立案や予算の編成をしたり、見通しが立ったことで過信をしてしまったりすることで起こります。

対処法1.タスクを分解する

 対策として、ひとつのタスクを複数の小タスクに分解することが有効です。そうすることで、計画をより現実的なものにすることができます。

対処法2.障害について検討する

 また、計画を妨げる可能性のある障害についても検討が必要でしょう。

 障害には予測可能なものと、予測不可能なものの2種類があります。

 予測可能な障害は計画に組み込み、予測不可能なもののためにはもともとの計画+50%の時間と労力を確保しておきましょう。

 たとえば、原稿を2日で書きあげることができると判断したときには、3日かかると伝えることで、急なタスクが発生した場合でも、余裕をもって対処することができます。

 出典:アン・ウーキョン (著) 花塚恵 (訳), 2023年9月, ダイヤモンド社,『イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法

タスク管理を見直そう

 当メディアでは、タスク管理に関する記事も公開しております。あわせてご確認ください。

 とくに、タスク管理において重要になる「バッファ」についての記述が参考になります。

 参考:スケジュール管理の第一歩は、タスク管理から。タスク管理が上手い人の特徴。

「6割」をキープする

 ストレス社会では想像以上に自分自身の心に負荷がかかっています。ときには、自分にかかっている負荷に気づかないこともあります。

 すでに限界になっているのに、それに気づかずにいると、ストレスが強くなったときに倒れてしまう可能性もあるでしょう。

 急なストレスにも対処できるようになるには、自分のキャパシティを、全力の「6割」とする考え方が有効です。

 残りの4割は、トラブルがあったときのための余力として取っておくことで、レジリエンスを高めることができます。

レジリエンスについて学べるお薦め書籍

『自衛隊心理教官と考える 心は鍛えられるのか』

 心を強く持つことの重要性が喧伝されていますが、意思だけで心を鍛えることは難しいでしょう。

 本書では、自衛隊で心理教官として活動してきた編著者をはじめとして、心理に携わる多様なバックグラウンドの専門家が、「心は鍛えられるのか」をテーマに論考を重ねています。

 精神論やハウツーに留まることなく、一生物の「心の強さ」について、じっくり考えてみたい方にお薦めの一冊です。

 参考:藤原 俊通 (編), 2020年5月, 遠見書房,『自衛隊心理教官と考える 心は鍛えられるのか──レジリエンス・リカバリー・マインドフルネス

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