
目次
ビジョントレーニングとは?
ビジョントレーニングとは「vision」「training」の二つの英単語を組み合わせた、和製英語です。
視力、視覚、視界、視野など。語源にしたがって考えると、「目に関する能力を鍛える訓練」を指す言葉であることがわかります。
具体的な訓練方法は様々ですが、いずれも目の能力を鍛えることを目的とする点で、共通しています。
ビジョントレーニングの目的
ビジョントレーニングには、2つの目的があります。
目をコントロールする(動体視力を鍛える)
ビジョントレーニングは、目をコントロールするために、欠かせない訓練です。
私たちは、何か特定のものに注意を向けるときに、対象物に視線を合わせるという行為をとります。これは、視線を合わせることで、視覚情報を取りこむことが可能となり、多くの情報を得られるためです。
視線を合わせるという行為は、無意識で行われるものです。しかし、いざ意識して目を動かすとなると、訓練をしていない限り、なかなか思い通りに動かないものです。
スポーツの領域では、「動体視力」という表現がされることがありますが、「目をコントロールする力」と「動く物体を視る力」は、同じ能力だといえるでしょう。
ビジョントレーニングには、自分が注意を向けたい場所に、自由自在に注意を向けられるようにするという目的があります。
認知視野を広げる
目を動かさなくても、自分の体の前方180度は、なんとなく視界に入ってきます。これが視野です。
しかし、たとえばプリントに書かれた文字を読むとなると、真正面に置かれたものしか読むことができません。対象を認知することができる範囲として、これを認知視野と呼びます。
どんなに訓練を積んだ人であっても、認知視野は、視野よりも狭くなります。しかし、訓練によって、認知視野を少しずつ広げることができます。
ビジョントレーニングには、認知視野を少しずつ広げ、視覚情報をより豊かにするという目的があります。
ビジョントレーニングのメリットや効果
スポーツ
動体視力と認知視野、いずれもスポーツには欠かせない能力です。
実際にビジョントレーニングを行った生徒さんからは「卓球のボールの回転が見やすくなった」「サッカーフィールド上で味方の位置関係が把握しやすくなった」「テニスが一気に上達した」という感想をいただくことも珍しくありません。
スポーツトレーニングに特化した「スポーツビジョン」という表現があるほど、スポーツと目の関係は深いのです。
日常
目のコントロールがしやすくなると、すぐに意識した対象に注意を向けることができるようになり、集中力がアップします。
また、認知視野が広がると、精神的にも広々とした気持ちになり、メンタルの安定も期待できます。
読書
本を速く読むには、本の1ページ全体を広く見て、瞬時に多くの文字情報を認識できる能力が必要です。
これはビジョントレーニングによって鍛えることができます。
クリエイト速読スクールでは、速読トレーニングの一部として、ビジョントレーニングを取り入れています。
参考:速読はなぜ目を動かすのか
ビジョントレーニングのコツ
ビジョントレーニングは、単調・退屈な側面があるため、なかなか全力で集中できないばかりか、いくらでも手を抜くことができてしまいます。
しかし、筋力トレーニングと同様、自分の限界まで負荷をかけてあげることではじめて、効果を発揮するのがビジョントレーニングです。
サッケイドシートの「練習」から、全力疾走する気持ち、前のめりに突っ込んでいく気持ちをもって挑戦していきましょう。
ビジョントレーニングの無料プリント
ここからは、実際に教室で使用している、ビジョントレーニング教材の一部をご紹介します。
たてサッケイド
教材
トレーニング目的
視野を広げ、広範囲に注意を向けられるようにするための基本トレーニングです。
眼球運動のトレーニングは視野の拡大につながります。
なぜなら、静止した目の状態で鮮明に見ることができる範囲は、視野の中心部に限られていますが、反射的にあちこちと目を動かすことで、視野の中心を変えることができるからです。
この反射的な眼球運動を、専門用語で「サッケイド」といいます。
トレーニング方法
シートに描かれた三角マークをポイントと呼びます。
連続トレーニング(30秒ずつ)
- 上下に4つずつ並んだポイントを、右上から一つずつジグザグに視点を動かして見ていきます。左下まで行ったら、1つずつ戻っていき右上を目指します。
- よこに並んだ2つのポイントを1組として、まとめて見ていきます。左下まで行ったら、往復することなく、最初に戻ります。
- よこに並んだ4つのポイントを1組として、上下に見ていきます。
- 再び、右上から1つずつジグザグに視点を動かして見ていきます。左下まで行ったら、往復することなく、最初に戻ります。
カウントトレーニング
連続トレーニングの次に行うのが、カウントトレーニングです。
1ポイントの片道の動作を、1分間で何回できるのかを計測します。
目標回数は1分間で30回です。
ヘルマンシート
教材
トレーニング目的
ヘルマンシートを見ると現れる影の錯視は、発見者の名前をとって「ヘルマンの錯視」と呼ばれています。
この錯視は、目の注意を向けると消えるという特徴を持ちます。
このトレーニングは、次々に影の錯視を消していくことで、広い範囲に注意を向けた状態をつくることを目的としています。
トレーニング方法
ヘルマンシートは、黒字に白い格子が描かれたシートです。
このシートをぼんやりと眺めていると、白い格子の交差点に、薄く灰色の影のようなものが見えます。
この影は一種の錯視で、実際に印刷されているわけではありません。
どこか1つの交差点に注意を向けると、錯視が消えることが確認できます。
トレーニングでは、次々にこの錯視の影を消していきます。
右上から左下までいったら「1回」とカウントし、1分で何回見ることができたのか数えましょう。
目標回数は10回です。
数字ランダムシート
教材
トレーニング目的
このトレーニングは、反射的な認知の働きを鍛えることを目的としています。
トレーニング方法
シート1枚に1〜99までの数字が、ランダムに記載されています。この数字を、1分間の制限時間内に、1から順番に見つけていくトレーニングです。
目標数値は30です。
数字ブロックパターンシート
教材
トレーニング目的
広範囲の文字に注意を向け、それらが文字のパターン認知の対象となる習慣を身につけることが目的です。
さらに、このトレーニングでは、リズミカルな眼球運動を加えることによって、意識しなくても必要な情報を求めて目が動く状態をつくることをねらいとしています。
トレーニング方法
まず最初に「1」から探していき、8ブロック見終わったら右上に戻って、「2」を探していきます。
「9」まで終わったら、次は「10」から始まる2桁を探します。たとえば「10」なら「1・0」を同時に見つけます。
「11」など、ゾロ目の場合は、1ブロックの中の数字を、1回だけ見ていきます。
制限時間は2分間です。
目標は「40」の8ブロック目まで見終わることです。
漢数字一行パターンシート
教材
トレーニング目的
注意範囲を行の形にすることで、目の使い方、注意の向け方が、ふつうのページを見る感覚に近くなり、実際の勉強や読書に応用しやすくなります。
トレーニング方法
1行の中に「◯」から「九」までの漢数字が不規則に並んでいます。ここから「◯」だけを探していきます。
90行見終わっても、次の「一」にいくのではなく、また1行目に戻って「◯」を探していきます。
制限時間は1分間です。
目標数値は1000です。
この記事のタグ
劉 智秀 1999年東京都生まれ/栄東中学・高等学校/東京大学経済学部卒/クリエイト速読スクール二代目代表