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公認会計士とは。独占業務「監査」をわかりやすく解説

更新日:2024年4月20日 公開日:2024年3月2日

公認会計士とは

 公認会計士は、監査及び会計の専門家です。

 公認会計士法では、以下のように定義されています。

 公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。

公認会計士法 第1条

独占業務「監査」とは

 独占業務とは、法律により、特定の資格を持つ者だけに、実施が許されている業務を指します。

 公認会計士の独占業務である「監査」とは、企業の財務諸表や業績などの情報を検証し、その正確性や適正性を評価するプロセスです。

財務諸表とは

 財務諸表とは、広く投資家から資金を集めるべく、会社が投資家に向けて公開する資料です。

 「塾に通うお金を出してもらうために、両親に成績表を見せて説得する」というイメージがわかりやすいでしょう。

 上記の例における成績表が、財務諸表に該当します。

 主に、会社が保有する資産や、経営業績に関する情報が記載されています。

なぜ監査が必要なのか

 なぜ、財務諸表を監査する必要があるのでしょうか。

 ここで、似た構造のシステムとして、徴税プロセスに着目したいと思います。もっとも厳密な徴税方法は、国家が国民一人ひとりの税金を計算して徴収するというものです。しかし、1億を超える国民全員の税額を計算するのには、膨大なコストがかかるため、現実的ではありません。そこで、一人ひとりの税額は、確定申告というかたちで、自己申告が行われます。自己申告を行う側には、虚偽の申告を行い、税額を減らそうとするインセンティブが働くため、税務当局が申告の妥当性をチェックしています。

 財務諸表も同様です。

 特定の独立した機関が、すべての企業の財務諸表を作成することが理想ではありますが、現実的ではありません。そこで、各企業の財務諸表は、自己申告の原則をもとに作成されます。しかし、自己申告を行う企業側には、虚偽の申告を行い、より経営状態を良く見せようとするインセンティブが働くため、公認会計士による監査が必要となるのです。

公認会計士の強み

 たとえ社会に大きく貢献していたとしても、利益を出すことができなければ、会社は存続できません。「ロマンとそろばん」のバランスが求められます。

 会計を学ぶことは、道具としての「そろばん」を手にいれることを意味します。

 公認会計士の市場価値が高いのは、この「そろばん」を操る能力に大きな価値があるため、といえるでしょう。

公認会計士のキャリア

 公認会計士は、会計に関する知識を活かして、幅広い分野で活躍をすることができます。

 主なキャリアパスを、以下にご紹介します。

監査業務

 監査法人に所属し、監査業務に従事します。

 将来的には、監査法人のパートナーとして活躍することが期待されます。

アドバイザリー

 企業やクライアントに対して、戦略的なアドバイスやコンサルティングを提供するアドバイザリーサービスに従事します。

 業績向上やリスク管理、経営戦略の策定、税務などが含まれます。

内部統制およびリスク管理

 企業の内部統制やリスク管理に関する専門家として活躍します。

 企業内でのリスク管理や、内部監査のポジションが該当します。

ファイナンスおよび経営企画

 企業の財務部門や経営企画部門で、資金調達、予算策定、経営戦略の策定に従事します。

 CFO(最高財務責任者)キャリアとして、近年注目が集まる分野です。

公認会計士試験の主要4科目

財務会計

 企業間で比較可能な形で記録をとるべく、会計にはさまざまなルールが定められています。

 財務会計では、会計記録を作成する際のルールを学びます。

 簿記で学習する内容と地続きになっていますが、現代の複雑な取引に対応するために、簿記よりも高度な内容を学びます。

 各企業が異なる基準で財務諸表を作成してしまうと、情報の比較ができません。

 会計記録の比較可能性と信頼性を担保するべく、財務会計が必要となるのです。

管理会計

 管理会計では、会計データから意思決定に役立つ情報を抽出する手法を学びます。

 商品の価格、生産量、年度予算、投資可否など。経営するなかで直面する、さまざまな意思決定に、数字の観点から切り込んでいきます。

 経営に直結する科目であるため、経営コンサルティングとも深い関わりがあります。

 参考:篠田 朝也, 藤本 康男, 2019年6月, 東京図書出版, 『中小企業のための管理会計 理論と実践

企業法

 会社法を中心に、商法や、金融商品取引法など。

 企業法では、企業にまつわる法律を体系的に学びます。

 最低限の法律リテラシーを身につけることで、法律関連の問題に直面した際に、自ら対応策を練ることができるようになります。

監査論

 監査論では、監査のルールやプロセス、監査証拠の集め方や評価の仕方を学びます。

 監査には、不正を発見するだけでなく、不正が発生しにくい組織づくりの視点も含まれています。

 これらの視点は、監査業務以外のキャリアを選択したとしても、役立つ武器となります。

公認会計士に向いている人

 公認会計士の勉強が自分に向いているかを判断するうえでは、「簿記3級」の資格を挑戦してみるのがオススメです。

 いくつかの予備校では、無料で簿記3級の講座を公開しています。

 まずは簿記3級の勉強をしてみて、手応えを感じることができれば、公認会計士の勉強に向いているといえます。

 以下、CPA会計学院が提供する、無料体験講義の詳細ページです。ご参考までに。

 参考:CPA会計学院の無料体験講義

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『会計の世界史』

 会計にまつわる制度や知識は、日常生活で触れる機会が少ないため、縁のない話と感じられる方も多いでしょう。

 しかし、その成り立ちは、私たちの生活と深く結びついた、動的な歴史の集積です。

 『会計の世界史』は、ビジネススクールで会計学を開講する著者による、会計の歴史物語です。

 会計の誕生から現代に至るまでの変遷を、誰でも楽しめるように、豊富なエピソードを交えて解説しています。

  • 会社の誕生と大航海時代には、深いつながりがある
  • 子どものお小遣い帳と会計帳簿。何が違うの?
  • 財務諸表がないと、誰がどう困るの?

 会計の魅力を、歴史とともに語る本書は、すべての方にお薦めできる一冊となっています。

 どうぞご一読ください。

 参考:田中 靖浩, 2018年9月, 日本経済新聞社, 『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 』