振り返りはなぜ必要? 定義・メリット・フレームワークを書籍ベースで解説 | 速読ナビ

基礎学習法

振り返りはなぜ必要? 定義・メリット・フレームワークを書籍ベースで解説

更新日:2024年4月20日 公開日:2024年1月2日

 この記事では、振り返りをテーマに、定義・メリット・必要性・基本フレームワーク・お薦め書籍などをご紹介しています。

振り返り(リフレクション)とは

 振り返りとは、「目標達成に向け、自らの行動や考えを客観的に顧みること」です。

 英語圏では「リフレクション」として学術的研究も進んでおり、マサチューセッツ大学のD.A.シェーン博士が第一人者として知られています。

 経験から次につながる学びを抽出するプロセスを、シェーン氏は「行動の中の内省(reflection in action)」と定義しています。

 参考:Donald A. Schon, 1984年4月, Basic Books, The Reflective Practitioner: How Professionals Think In Action

なぜ振り返りが必要なのか

 アメリカのコンサルタント会社ロミンガー社が提唱した「70:20:10の法則」によれば、個人の能力開発における影響力の70%が「仕事での直接的な経験」、20%が「他者からの指導」、10%が「研修や読書」であるとされています。

 日々の業務やプロジェクトから得られる経験が成長の大部分を占めるわけですが、これには経験を振り返り、学びへと昇華させる時間が必要不可欠です。

 つまり、振り返りは、経験を成長へと繋げるための手段であると言えるでしょう。

 参考:Michael M. Lombardo , Robert W. Eichinger ,2010年1月, Lominger,  Career Architect Development Planner, 5th Edition Paperback

振り返りを行うメリット

暗黙知の共有

 振り返りにより個人の洞察を言語化することで、暗黙知を、組織全体で共有することが可能になります。

 経験に基づく洞察を共有することは、同種の作業に対する組織の対応力を強化します。

再現性の向上

 経験を振り返るプロセスは、成功要因や失敗要因を会社内に蓄積し、再現性の向上に役立ちます。

モチベーションの維持

 経験を重ねても、成長が実感できなければ、モチベーションを喪失しかねません。

 定期的に経験を振り返ることは、成長を実感し、モチベーションを維持するうえでも大切です。

振り返りの基本フレームワーク

 振り返りを初めて導入する際は、まずは基本的なフレームワークを採用してみましょう。

 ここでは、振り返りの代表的な手法である「経験学習モデル」をご紹介します。

経験学習モデル

 経験学習モデルは、アメリカの教育学者デイヴィッド・コルブ氏によって提唱された学習理論です。

 この理論では、「具体的経験」「内省」「抽象的概念化」「能動的実験」の4つのステップからなる学習サイクルを繰り返し、経験を成長へと繋げていきます。

 参考:松尾 睦, 2011年6月, ダイヤモンド社, 『職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門

1.具体的経験

 業務や活動の中での具体的な「経験」を指します。

 具体的経験は、学習サイクルの出発点となり、後に続く内省や抽象的概念化の基礎となります。

 (例)営業担当が、新規顧客にアプローチし、顧客獲得に成功した。

2.内省

 内省の目的は、経験から「教訓」を得ることです。

 具体的経験の内容について振り返り、分析を行います。

 (例)「なぜ顧客獲得に成功したのか」を明らかにすべく、会話内容、効果的だった質問、顧客の興味を引いた説明、顧客の反応などを洗い出す。

 「顧客のニーズを丁寧にヒアリングし、その課題を解決する手段として製品を説明することで、新規顧客を獲得できた」というように、経験が示唆する事柄を、教訓として明らかにすることを目指します。

3.抽象的概念化

 抽象的概念化は、内省から得た教訓をもとに、仮説を生み出すステップです。

 成功体験であれば、他の場面に応用できるような仮説を組み立てていきます。

 (例)内省で得られた教訓をもとに「顧客中心のアプローチを成功させるためのポイント3選」という仮説を立てる。

4.能動的実験

 仮説の確からしさを確認するべく、抽象的概念化で組み立てた仮説を、他の場面で実験的に検証していきます。

 検証の結果、得られた経験をもとに、またステップ1から経験学習モデルのサイクルを回していきます。

自分に合った『最強の経験学習』を

 経験学習モデルは、個人の経験を成長につなげる実践的な理論です。

 具体的経験、内省、抽象的概念化、能動的実験の4つのステップには、人によってそれぞれ得手不得手があります。

 「内省によって教訓は得られるが、教訓から検証可能な仮説を立てることが苦手」「仮説を立てるのは得意だが、失敗を恐れて能動的実験に移せない」などがその例です。

 以下の書籍では、4つのステップの得手不得手に応じて、9つの学習スタイルを提示しています。

 自分に合った方法で、経験学習モデルを実践することができる、心強い一冊となっています。

 ご興味のある方は、ぜひご一読ください。

 参考:デイヴィッド・コルブ , ケイ・ピーターソン , 中野 眞由美 翻訳, 2018年9月, 辰巳出版, 『最強の経験学習

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