【処理能力の土台】ワーキングメモリを鍛える方法 | 速読ナビ

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【処理能力の土台】ワーキングメモリを鍛える方法

更新日:2024年5月7日 公開日:2024年1月18日

ワーキングメモリの定義

 ワーキングメモリとは「見たあるいは聞いた情報を、一時的に記憶にとどめ、その情報を操作する能力」のことです。

 たとえば、暗算が得意な方は、インプットした数字を頭の中で操作する能力が高く、ワーキングメモリが高い傾向にあります。

ワーキングメモリの4つの機能

 ワーキングメモリは4つの機能から構成されると考えられています。

 ここではワーキングメモリ研究の第一人者であるBaddeley(2000)の「複数成分モデル」をもとに、ワーキングメモリの4つの機能について解説します。

 参考:バドリーアラン【著】, 佐伯恵里奈, 齊藤智【監訳】, 2020年2月, 北大路書房, 『ワーキングメモリの探究 アラン・バドリー主要論文集

視空間スケッチパッド

 視空間スケッチパッドとは「情報を視覚的なイメージとして、記憶・操作する機能」のことです。

 たとえば、人の話を映像のようにイメージしながら聴くことができる人は、視空間スケッチパッドの機能が優れているといえます。

エピソードバッファ

 エピソードバッファとは「視覚や聴覚から入力された複数の情報を、物語として整理し、記憶・操作する機能」のことです。

 たとえば、ある一連の出来事を物語として記憶し、順序立てて他者に伝えることができる人は、エピソードバッファの機能が優れているといえます。

音韻ループ

 音韻ループとは「会話や読書の際に、言語を音声情報として捉え、一定の時間保持する機能」のことです。

 たとえば、電話番号を繰り返し頭の中で唱えて覚える際には、音韻ループの機能を活用しているといえます。

中央実行系

 中央実行系とは「視空間スケッチパッド・エピソードバッファ・音韻ループ、以上3つの機能を統合し、コントロールする機能」のことです。

 目の前にある課題を実行するうえで最適な機能を作動させ、調整します。

 会議を例に挙げると、会議全体の雰囲気や話題の移り変わりを理解するにはエピソードバッファ、要点を理解する際には音韻ループや視空間スケッチパッド、がそれぞれ機能します。

 このように、一つの場面で別々の機能を使い分ける必要があるときに、中央実行系が機能しています。

強み・弱みは人それぞれ

 人によって、強みとなる機能と弱みとなる機能があります。

 具体的には、以下のようなケースが考えられます。

  • エピソードバッファの能力が高いため、人との会話を覚えることが得意
  • 視空間スケッチパッドの能力が低いため、人の顔を覚えることが苦手

 自分の強みと弱みについて理解しておくことで、自分にあった方法で仕事や勉強をすることができます。

 上記の例であれば「自分はエピソードバッファが強みである一方、視空間スケッチパッドが弱みなので、頭では会話内容をエピソードを思い浮かべつつ、外見的な特徴はメモをとる」といった対策を考えることができます。

ワーキングメモリを鍛えるメリット

 ワーキングメモリは、負荷のかかるマルチタスクを通じて、後天的に鍛えることが可能であるとされています。

 ワーキングメモリは、情報処理の土台であるため、鍛えることで仕事や勉強の効率化が図れます。

 具体的には次のようなメリットが考えられます。

  • 集中力を持ってタスクを処理することができる
  • 仕事や勉強でのケアレスミスが少なくなる
  • 与えられた情報を効率よくまとめることができる
  • オンオフや仕事の切り替えが得意になる

ワーキングメモリを鍛える方法

 ワーキングメモリを鍛えるためには、どのような方法があるでしょうか。

 まず、一般的に効果があるとされている方法をご紹介します。

  • マルチタスクを心がける
  • 脳トレをする
  • 内容をイメージしながら小説を読む
  • 暗算をする
  • 情報をまとめる練習をする

 どの方法にも共通しているのは、ワーキングメモリを積極的に用いて、頭に負荷をかけることです。

 継続して取り組めば、一定の効果が見込めますが、いずれも反復作業として行うには苦痛に感じる方も多いでしょう。

ワーキングメモリに着目した速読トレーニング

 「速読には、情報処理機能の改善が必要である」という考えのもと、クリエイト速読スクールでは、ワーキングメモリを鍛える多彩なトレーニングをご用意してます。

 継続することを前提に、お子さんでも飽きずに続けられるプログラム設計となっています。

 ワーキングメモリには「視空間スケッチパッド」「音韻ループ」「エピソードバッファ」「中央実行系」の4つの機能があり、それぞれの機能に応じた訓練が必要です。

 クリエイト速読スクールでは、複数のコンパクトなトレーニングを組み合わせることで、全ての機能をバランスよく鍛えることを目指します。

 ボトルネックとなる機能を補いつつ、得意とする機能を積極的に伸ばしていく、というアプローチです。

ワーキングメモリを鍛えてみよう

 ここでは、トレーニングの一つ、ロジカルテストを体験してみましょう。

使用する教材

脳トレプリント_論理

印刷は以下のリンクからどうぞ。

トレーニング方法

  • 設問を読んで、解答欄に「A」「B」「C」で答えを記入します。
  • 答えを考えるときは、メモはせず、頭の中だけで考えます。
  • 制限時間は3分です。終わったら答え合わせをします。

トレーニング目的

 見た情報を、頭の中で素早く処理する能力を鍛えることが目的です。

 「ロジカルテスト」は、問題文を頭の中で整理することを通じて、文章内容を論理的に理解する力を鍛える点に特徴があります。

 頭の中で大小関係を整理する作業が、とくに「視空間スケッチパッド」に負荷をかけます。

ロジカルテストのコツ

 このトレーニングをしている3分間、焦って頭が真っ白になったり、とてもハードな時間に感じる方もいるかもしれません。

 集中して取り組んでいくのはもちろんですが、混乱してしまったときは、少しリラックスして問題にトライしましょう。

自分の論理的思考力は高い? 低い?

 教室に通う20代〜30代男性の入会時平均スコアは、「10/12」です。

 理系専門職やコンサルタントなど、論理的思考力が高いとされる属性の方は、スコアが高い傾向にあります。

ワーキングメモリを鍛える際の留意点

 トレーニングはいかがでしたか。

 適切に設計されたプログラムを利用することで、ワーキングメモリは、確実に鍛えることができます。

 ただし、ワーキングメモリを鍛えようとする際には、いくつか留意点があります。

本人のやる気が前提

 どのような方法であれ、効果を出すためには、継続して行う必要があります。

 何よりもまず本人のやる気がなければ、途中で挫折してしまうでしょう。

 とくに、お子さんに勧める場合には注意が必要です。

 本人にやる気がないのに無理強いしたり、本人が苦手とするトレーニングを強制することで、無用な失敗体験をさせて自信をなくすというような逆効果も考えられます。

ワーキングメモリだけが原因ではない可能性も

 勉強や仕事は、さまざまな能力が組み合わさることで初めて実現する、総合的な知的活動です。

 仮にワーキングメモリが向上したとしても、ボトルネックとなっている能力が別にある場合は、すぐに効果を感じられない可能性もあります。

 こうした観点から、クリエイト速読スクールでは、様々な能力に対応した複数のトレーニングをご用意しています。

 どのようなトレーニングを行い、どのような成果をあげているのか。どうぞ、当ブログの「受講生の声」カテゴリをご一読ください。

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