目次
エビングハウスの忘却曲線とは
心理学者エビングハウス
エビングハウスは、1800年代後半にドイツで活動した心理学者です。
心理学者として最初に記憶実験を行った、記憶実験の元祖です。
彼は多くの記憶実験を行いましたが、その中でも一番有名なのが、時間経過によって忘却がどのように進むのかを調べた実験です。
今では「エビングハウスの忘却曲線」として知られています。
エビングハウスの論文内容
無意味なアルファベットの組み合わせ(例:SEU、ZORなど)を暗記し、一定時間後にどれだけ覚えているかを測定しました。
その結果、記憶の保持率は(覚えていた組み合わせの割合)、20分後には58%、1時間後には44%、24時間後には34%、1か月後には21%となりました。

以上のことから、記憶の保持率は、24時間までに急速に低下することがわかります。
出典:Ebbinghaus, H. (1885). Über das Gedächtnis: Untersuchungen zur experimentellen Psychologie.
出典:無藤 隆, 森 敏昭, 遠藤 由美, 玉瀬 耕治, 『心理学 新版』 有斐閣, 2018年4月
関連:バートレットの実験
一方、イギリスの心理学者バートレットは、無意味なアルファベットを用いて実験を行うことに批判的でした。
私たちの日常において、記憶の対象になるのは、意味のある情報だからです。
そこで、彼は意味のある情報として、物語を用いた記憶実験を行いました。
その結果、エビングハウスの実験とは異なる洞察が得られ、これをもとにスキーマという視点が生まれました。
詳細は以下の記事をご確認ください。
なぜ人はすぐに忘れてしまうのか
脳は情報を取捨選択している
忘却の背景には、脳の情報処理の仕組みがあります。
人間の脳は、日々膨大な情報を受け取っていますが、すべてを長期的に保存することはできません。
そのため、再び利用するかもしれない重要な情報だけを長期記憶に残し、それ以外は自然に捨てています。
参考:無藤 隆, 森 敏昭, 遠藤 由美, 玉瀬 耕治, 『心理学 新版』 有斐閣, 2018年4月
短期記憶と長期記憶の違い
短期記憶は、通常数秒〜数分間程度しか保持されない一時的な記憶であり、保持できる容量も限られています。
会話、読書、計算などの遂行中に、情報処理を行うための作業場としての機能を果たします。
一方、長期記憶は、長期間保持される記憶であり、保持できる容量も膨大です。
入学試験や資格試験では、長期記憶に入った情報を武器に戦うことになるわけです。
参考:短期記憶とは。長期記憶との違いやマジカルナンバーについて
エピソード記憶と意味記憶
記憶を定着させるとは、短期記憶を長期記憶へと変えることです。
長期記憶の種類と特徴を整理することで、効果的な記憶法の示唆を得ることができます。
以下では、2つの長期記憶について紹介していきます。
そのほかの長期記憶について気になる方は、以下の記事をご覧ください。
エピソード記憶
エピソード記憶とは、過去に自分が経験した出来事の記憶です。
例えば、「昨日、学食で月見うどんを食べた」という記憶はエピソード記憶です。
何かを覚える時は、実際にその対象を経験するか、イメージを駆使して擬似体験することで、長期記憶として残りやすくなります。
意味記憶
意味記憶とは、辞書的な知識のことであり、自分が「知っている」記憶です。
たとえば、「月見うどんという料理名は、生卵の黄身が月に見えることからきている」という記憶は意味記憶です。
何かを覚えるときは、丸暗記するのではなく、その対象の意味を理解しながら覚えると長期記憶として残りやすくなります。
イメージ記憶トレーニング
クリエイト速読スクールでは、エピソード記憶の特徴を活かした、イメージ記憶トレーニングを実施しています。
以下の記事でトレーニングを体験することができます。
ぜひ一度体験してみてください。
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劉 智秀 1999年東京都生まれ/栄東中学・高等学校/東京大学経済学部卒/クリエイト速読スクール二代目代表

