記憶とは何か。記憶の種類やメカニズムについて | 速読ナビ

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記憶とは何か。記憶の種類やメカニズムについて

更新日:2024年4月20日 公開日:2024年3月21日

記憶とは

 記憶には3つの要素があります。

 情報を覚えること、保ちつづけること、思いだすことです。

 認知心理学の専門用語では、記銘、貯蔵、想起といいます。

 記憶とは、記銘、貯蔵、想起からなる認知機能(高度な知的活動)のことです。

記憶のメカニズム

 記銘、貯蔵、想起からなる記憶のメカニズムについて、具体例を交えて解説します。

 例として、「速読ナビ」という情報について覚えるメカニズムを見ていきましょう。

記銘

 記銘とは、ある情報を覚えることです。

 PCやスマートフォンに映る「速読ナビ」という視覚情報を目から入力します。

貯蔵

 貯蔵とは、記銘した情報を保ちつづけることです。

 「速読ナビ」について覚えている状態を意味します。

想起

 想起とは、記銘・貯蔵した情報を思いだすことです。

 検索エンジンのタブで閉じたあと、「さっき見た記憶の記事は何に載っていたっけ? そうだ、速読ナビだ」と思い出したとき、記憶の想起が生じたことになります。

 想起は成功することもあれば、「さっき見たメディアの名前はなんだっけ、思い出せないな」と失敗することもあります。

 記憶の想起に失敗することを、忘却といいます。

心理学における記憶の種類①:保持時間に注目

 一口に記憶と言っても、電話番号をメモするために一時的に覚えるとき、受験勉強のために英単語を覚えるとき、はたまた自転車の乗り方について覚えるときでは、感覚が異なるのではないでしょうか。

 記憶には、いくつかの種類があります。

 まずは、記憶の「保持時間」に着目した分類をご紹介します。

感覚記憶

 それぞれの感覚器官から入力された情報が、ごくわずかな間だけ保存されたものを、感覚記憶といいます。

 感覚記憶は、短期記憶の材料としての役割を担う、もっとも保持時間の短い記憶です。

 目による感覚記憶をアイコニックメモリー、耳による感覚記憶をエコイックメモリーといいます。

 出典:道又 爾, 北﨑 充晃, 大久保 街亜, 今井 久登, 山川 恵子, 黒沢 学 (著), 2011年12月, 有斐閣アルマ,『認知心理学――知のアーキテクチャを探る〔新版〕

短期記憶

 感覚記憶として保持された情報のうち、覚えようと意図されたものは、短期記憶として保存されます。

 ただし、保持時間は依然として短く、保持できる情報量にも限りがあります。

 短期記憶については、以下の記事に詳しいです。

 参考:短期記憶とは。長期記憶との違いやマジカルナンバーについて。

 参考:短期記憶の一種。ワーキングメモリを鍛える方法。

長期記憶

 短期記憶に保持されている情報は、記銘を繰り返すことによって、長期記憶に移行します。

 長期記憶は、半永久的に、大量の情報を保存することができます。

 一言に長期記憶といえど、その内実は、さまざまな種類の記憶で構成されています。

 たとえば、自転車に関する長期記憶といっても、「はじめて自転車に乗れた日の思い出」と「自転車の乗り方に関する記憶」とでは、性質が異なります。

 こうした性質の違いに注目すると、長期記憶はさらに、次の2種類に分けられます。

  • 言語化される「宣言的記憶」
  • 言語化されない「非宣言的記憶」

宣言的記憶

 宣言的記憶とは、言語化される情報をつかさどる記憶です。

 宣言的記憶は、エピソード記憶と意味記憶が挙げられます。

 エピソード記憶は、過去に自分が経験した出来事の記憶です。思い出の記憶ともいえるでしょう。

 「いつ、どこで」という文脈情報と、「思い出す」という主観的な感覚を伴うのが特徴です。

 「昨日、帰りの電車で速読ナビの記事を見た」という記憶は、エピソード記憶です。

 参考:エピソード記憶とは。認知心理学の世界をのぞいてみよう。

 

 それに対し意味記憶は、「クリエイト速読スクールが運営するメディアの名前は速読ナビ」というような、辞書的な知識の記憶です。

 「いつ、どこで」という文脈情報はなく、「知っている」という主観的な感覚を伴うのが特徴です。

非宣言的記憶

 非宣言的記憶とは、言語化されない記憶です。代表例として、手続き記憶が挙げられます。

 手続き記憶とは、技能や運動など、身体が覚えている記憶のことです。

 「自転車の乗り方」などが該当します。

心理学における記憶の種類②:その他の記憶

 記憶を分類するうえでは、保持時間以外の分け方もあります。

 ここからは、記憶研究において重要とされる、その他の記憶についてご説明します。

フラッシュバルブ記憶

 災害等のインパクトのある出来事の記憶で、一度の出来事であるにもかかわらず鮮明に残るものを、フラッシュバルブ記憶といいます。

展望記憶

 展望記憶とは、これから行うべき行動に関する記憶です。「未来の記憶」ということもできます。

 展望記憶と比較をする文脈において、これまでにご紹介してきた記憶は、回顧記憶とよばれます。

虚偽記憶

 実際には経験していないことを、あたかも経験したかのように想起することを、虚偽記憶といいます。

 以下の記事で、具体例を交えながら解説をしています。

 参考:エピソード記憶とは。認知心理学の世界をのぞいてみよう。

記憶とコンピュータメモリの違い

 スマートフォンやコンピュータなどの電子機器は、メモリの容量があらかじめ決まっており、容量の範囲内でデータの保存ができます。

 「64GBと128GBでは、情報の貯蔵庫の大きさが2倍違う」と比較することができます。

 人間の記憶もコンピュータメモリと同様、貯蔵庫のような仕組みになっていることは事実です。

 しかし、貯蔵庫が、さまざまな処理機構と連結されている点に、コンピュータメモリとの違いがあります。

 たとえ同じ情報であっても、処理方法によって、記憶容量が変化するのです。

 10桁の数字を覚えるのは苦労しても、3桁-4桁-4桁の携帯電話番号はすんなり覚えられるのは、記憶の仕組みが理由なのです。

 情報を処理することで記憶容量が変化したり、ある記憶がほかの記憶に影響を与えたりする点に、記憶のおもしろさがあります。

 参考:鈴木宏昭, 2016年1月, 東京大学出版会,『教養としての認知科学