なおしのお薦め本(62)『ついていったら、だまされる』 | 教室ブログ by クリエイト速読スクール

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2008-07-06

小川なおし「作品」&お薦め本

なおしのお薦め本(62)『ついていったら、だまされる』

 クリエイト速読スクール文演第1期生の小川なおしさんから、お薦め本が届いています。

 ついていったら、だまされる

             多田 文明

 奇特な人がいるものです。怪しい人についていって、その顛末を人に教えてくれるというのですから。

 手相占い、先祖のたたり、デート商法、出会い系、ボランティア、オーディション。このようなものに興味があったり、興味を持たざるをえなくなった人は、この本を読んだほうがいいと思います。だましの手口がよくわかります。

 自分はだまされないという自信がある人は、ぜひ次の文章を読んでみてください。

 「きみたち、ぼくたちをだまそうとする輩は、人の『思いやり』や夢といったものにつけいってくることがじつに巧みだ。

 逆に言えば、『思いやりの気持ち』『将来、こうなりたいという夢』というものほど、ある人間にとってはだましやすいものはない、ということなんだよ。

 こういった『だましやすいもの』は、誰もがもっている。誰もが無縁ではない。

 だから、誰もがだまされる対象となる。

 たとえば、ふだんはキャッチセールスの勧誘なんかには立ちどまらないのに、なぜかふらふらとついていってしまったという人の話を聞くと、『そのとき、たまたま何か新しいことをはじめようという気分が高まっていた』とか『上司に仕事ぶりをほめられ、ヤル気になっていた』とか、前向きな気持ちのタイミングで声をかけられて、つい……という人が、意外にも多いんだ。

 もちろん、それとはまったく正反対の答えが返ってくることもあるけどね。それは『失恋した直後だった』とか『上司に怒られて仕事をやめようか悩んでいた』とか、すごくマイナスな状況がその人の身に訪れていた場合にも、人は知らない人のアプローチに応じてしまいがちだったりする。

 人は、前向きなときにも、後ろ向きなときにも、両方だまされる。

 どうして正反対の状況でも同じことが起こるのか、そのメカニズムがわかるかな?

 じつは『後ろ向きな気持ち』って、根っこには『前向きな気持ち』が必ずあるから。そう、『後ろ向き』だから、人は『前向き』にもなれるんだ」

 もう一箇所だけ、引用します。著者が、だまされる原因について私論を述べています。

 「……いちばん大きな原因は、ぼくたちの受けてきた『学校教育』にあるのかもしれない、と思ったんだ。

 先生から教えられることは、はじめは知らないことだらけだよね。ある意味、知らないことを説明されて、その内容を暗記のようにして覚えさせられる。そうやって『正解とされる考え方』を身につけていって、しだいにものごとのなりたちを理解していくんだ」

 「つまり、『どうして?』という疑問はひとまず後回しにしながら、だんだん、身につけた考えを蓄積し、広めていくというやり方なんだ。

 べつに、ぼくはこの教育のしかたが悪い、と言っているわけではないよ。

 そうではなくて、そういうやり方以外で何かを『考える』ということを、ぼくたちはあんまりやってきたことがないんだな、ということなんだ。疑問を後回しにしないで、疑問そのものに向き合うことで『考える』ということをしてみることに、ぼくたちはあんまり慣れていない。

 だから、街の路上でいきなり声をかけてきた人に対して、『なんか、ちょっとヘンじゃないかな……』と違和感を覚えても、『いま、疑問について考える』ということができないために、『まあいいや、後でゆっくり考えよう』とサボってしまう。相手は、『いま、ここで、こいつをだましてやろう』といろいろと知恵をめぐらしている人間だ。勝負はどうなる?」

 この本は、中学生でも読めるように漢字を減らしていますが、大人にもじゅうぶん役立ちます。これこそ実用書、と言えるでしょう。 なおし

 

             ■参考記事

      ※もりぞう爺さんの話(上) 

       

     

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