2007-04-15
なおしのお薦め本(15)失敗は、顔だけで十分です。
これは、著者のネタを1ページに一つ収めた、大活字本です。文庫オリジナルで、小倉智昭さんの解説がついています。内容は、褒めているところとそうではなさそうなところがあります。前者はこのようなところです。
「同じしゃべりのプロとして興味深いのは、CDを何回か聴けば次に何を言うのかがわかってしまうのに、それでも笑えるのはなぜか。これは、きみまろさんが『笑いのツボ』を心得ているから可能なことで、間の使い方とかお客さんを引きつける話の持っていき方、起承転結のつけ方などは個人的に非常に参考になります」
しゃべりのプロさえも同じCDで繰り返し笑わせることができる、というのは凄いことだと思います。それから、こんな記述もあります。
「また、キャバレーの司会や演歌歌手の専属司会という独特の世界で笑いをとって芸を練り上げてきた人ですから、お客さんの心をつかまえる、とくに年配の人をくすぐるのがうまいですね。年配の人はきついことを言っていじめればいじめるほどついてきますから。僕も番組で辛らつなことやシビアな意見を言いますが、視聴者の奥様方はついてきてくださる。それはなぜかといえば、きみまろさんと同じで、バランスとしての『やさしさ』をつねに意識して発言しているからなんです」
あれっ? これは、著者を褒めるというより自分を褒めているように思えるのですが、どうでしょう。
それから、褒めているだけではなく、きみまろさんを困らせるような意見もあります。
「番組でコメントを求めたときなど、緊張しているのがよくわかりました。落語家でもふだんは物静かで、高座に上がると別人のように面白くなる人がいますが、それと同じで、やはり練り上げた芸の人なんですね」
「きみまろさんにとってジレンマが生まれるとしたら、おそらくここでしょう。ステージ用に作り上げたネタではない、日常的な会話の中でちょっとした話芸ができるかどうか」
あれだけの芸ができてもこんな手厳しい意見を浴びせられるんだ、と芸能界の恐ろしさを感じさせてくれます。
と、解説からの引用が長くなってしまいました。本文から少し引用します。
「ブスだっていいじゃない‼ とっちらかってるだけじゃない」(これで1ページ)
「デブでもいいじゃない‼ やせてないだけじゃない」(これで1ページ)
“だけ”と限定する言葉を入れることで、そんなこと大したことはない、と思わせる効果が出るようです。語尾も同じなので、いいリズムにもなっています。ためしに私も真似してみました。
「貧乏でもいいじゃない‼ お金がないだけじゃない」
「馬鹿でもいいじゃない‼ 頭が良くないだけじゃない」
「独身でもいいじゃない‼ 配偶者がいないだけじゃない」
「ハゲでもいいじゃない‼ 毛がないだけじゃない」
なんだか、なにがなんでも、もうどうでもいいような気持ちになってきました。純粋に楽しいです。
こんなことを余白に書き入れて遊べるのですから、この本は『きみまろワークブック』と名づけてもいいのではないかと思います。使えます。
なおし
