2007-05-09
なおしのお薦め本(19)老人介護 常識の誤りa
クリエイト速読スクール文演第1期生の小川なおしさんから、お薦め本が届いています。文字数がgooブログの1回の量を超えますので、2回に分けて投稿します。
こんな底抜け脱線ゲームのような世の中で、長生きしているということは、それだけで素晴らしいことだと思います。でも、そうは思えない事情がある人も数多くいることでしょう。そんな介護に苦しむ人に役立つのが、理学療法士の著者が書いたこの本です。
老人介護の問題というと、“寝たきり”と”呆け”の問題と言っていいでしょう。
著者による、常識に対する見解をあげてみます。
寝たきりの原因の約半数が脳卒中と言われていますが、これについては
「重いマヒでも寝たきりではない人がいくらでもいる」
「主体が崩壊して自発的に動かなくなり、その結果、動けない体になったのだ」
「主体が崩壊しているとは、生きていこうという気持ちがなくなっていることである」
「なぜ主体が崩壊するのか」
「呆けた老人の置かれた生活が“生活”と呼ぶに値しないものだったからである」
「寝たきりの原因は、家の中、ベッドの中に閉じこもることである」
と反論しています。
呆けについては「朝ご飯に何を食べたかを忘れるのは老化、食べたことそのものを忘れると呆け」という分け方がありますが、これに対しては「学者さんたちは分類したがる」と一蹴。
「朝、ご飯を食べたかどうかさえ忘れていても、ちゃんと自分の仕事をこなし、ニコニコしている人気者のお婆さんはいくらでもいる」そうです。「物忘れへの対処法」を知っていれば問題ないということで、その方法を引用します。
「歳をとって判らないことがあれば、判る人に聞けばいいのだ。周りの若い人に教えてもらえばいい」
なんだそんなことか、と思いましたが、続きの具体的な話を読んでいくと印象が変わっていきます。
「『私の歳、今年で何歳だったかね?』
お嫁さんが答える。
『あら、お母さん、このあいだ八二歳の誕生祝いをしたばかりでしょう』
『あ、そうか、アハハハハ。ところで今朝ご飯食べたかね』
『食べましたよ、三ぜんも』
『あ、そうか、アハハハハ』
問題はここで嫁の言うことを信じられるかどうか、ここにかかっている。
『この嫁は私にご飯も食べさせないで、食べたと嘘をついている』と思うか、それとも『あ、そうか、アハハハハ』と笑えるか、これを決めるのはそれまでの人間関係である。嫁との仲が悪ければ、そして長い人生の中で人間が信じられなければ、とてもアハハと笑ってはいられない。いや、そんな信じられない他人の前に自分が歳も判らないほどもうろくしているという弱みなんかを見せるはずがない。そこで本当は判らないのに判っているふりをするのである」
これを老人だけの問題だと思っていると、とんでもないことになりそうです。これを読んでみてください。
「……物忘れしてもニコニコして人気者でいられるにはどうしたらいいか。人が信じられること、そして人に自分の弱みを見せられることだ。これ、それほど簡単ではなさそうである。なにしろ歳をとってからでは間に合わない。若い頃からの積み重ねが大事だからだ。あなたは自分より若い人に仕事上の失敗を指摘されて、素直に反省できるだろうか。助けてもらって『ありがとう』と言えるだろうか」
どうやら今までの生き方は間違っていたみたい、と思ったのは私だけでしょうか。 -続き-
