なおしのお薦め本(33)『大槻ケンヂの読みだおれ』 | 教室ブログ by クリエイト速読スクール

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2007-08-29

小川なおし「作品」&お薦め本

なおしのお薦め本(33)『大槻ケンヂの読みだおれ』

 クリエイト速読スクール文演第1期生の小川なおしさんから、お薦め本が届いています。

大槻ケンヂの読みだおれ

           大槻 ケンヂ

 エッセーや対談を集めた本です。この中に仮面ライダーについて書かれたものがありまして、これは私が今まで読んだ仮面ライダーに関する文の中で一番オモシロいものだったので紹介します。

 「少年の頃に見ていた番組を中心に、テレビについてのほほんと書いていこうと思う。

 第一回目は『仮面ライダー』。

 僕が若宮幼稚園の年長組の頃に始まった番組だ。

 放送開始の数週間前に、主題歌を収めたレコードが商店街で発売されていて、親に泣いてねだって買ってもらった。ジャケットにドーンと描かれたバッタの化け物のインパクトにビリビリとくるものがあったのだ。

 『♪すぅえまるぁるぅう しいょっくわああ! じゅごくのぎゅうんだああん!』

 レコードの針を落としてまたビリビリきた。北島三郎がバーニングしたかのような子門真人の歌声は納豆よりもねちっこく糸を引いているではないか。で、ライダー第一回目の怪人が『怪奇! 蜘蛛男』とは、こちらも糸ひいてうまいねどーも。と幼稚園児心にじーさんのような感心をしたものだ。

 土曜夜7時半、『仮面ライダー』の放送が始まり、すべてのバカガキがそうであったように僕もまたテレビの前で小便ちびった。

 怪人! 変身! 改造バイク! 死闘! 乱闘! 大爆発!

 何もかもがバカガキのトラウマをビンビンに刺激する直撃弾の嵐であった。

 中でも主人公・本郷猛に扮する藤岡弘のフェロモンは強烈すぎた。剛毛! もみ上げ! 極太眉毛! 男性ホルモンをガマの油で煮込んだようなこの男が、ブレザーに派手ネクタイ、ピチピチの純白スラックスという気の違ったようなファッションでバイクにまたがりズドドドッとやってきたとき、多くのバカガキどもは、『性』という人生における難題を初めて意識した」

 言葉の畳みかけが、ただごとではありません。でもこの感じが、仮面ライダーを表すのにピッタリなのではないでしょうか。音楽家ならではの文章、とも言えますね。

 この本、笑わせる話ばかりでもありません。こんなことも書いています。

 「藤岡弘に続いて登場した2号仮面ライダー一文字隼人を演じたのは佐々木剛だ。

 先日、僕は佐々木さんとお会いする機会に恵まれた。そのときに伺ったお話がなんだかすごかった。

 佐々木さんは、つい数年前まで、ホームレスをやっていたのだそうだ。

 仮面ライダー2号を演じてから数年後、火事にあい、大火傷を負い、本人曰く、『顔も焼かれた』ために、彼はテレビの世界から消えた。廃品回収や焼イモを売ったりしながら生活していたが、酒に溺れ離婚、焼けクソになって、車に寝泊りしながら日本中を放浪。ヒーローを演じた男がホームレスに変身していたのだ。数年後、友人の助言により日光江戸村で演技指導を始めるが、訪れた仮面ライダーファンクラブ会員の熱意に動かされ、最近、俳優として現役復帰を果たしたのだそうだ。

 知らなかった。我らのヒーローがそんなドトーの人生を送っていたなんて。聞いていて僕の瞳は思わず潤んだ。

 『馬鹿な人生を送ってますよ』

 フッ、と笑った佐々木剛の表情には、藤岡弘とはまた違った大人のフェロモン…哀愁がにじみ出ていて、僕はさらに深く心動かされた。

 『でもね、これも業なんです』

 業、そうでしょうねぇ、人間ってのは……。

 『いえいえ、火事で顔を焼かれる数日前ね、霊が現れましてねぇ』

 …へ? 何? 霊って言いました今。

 『その霊がね、私に言うんです。お前の先祖の業を、お前が請け負うか? ってね』

 それ何? 我らのヒーロー感動の復活にウルウルしていた僕はあまりに唐突な話のズレ方に言葉をなくした」

 話がミョーな方向、というかムー(学研)の方向に行ってしまいましたので、引用はここまでにさせていただきます。失礼しました。  なおし

 

            ※クリエイト速読スクールHP


  ■小川なおしさん参考記事

  ※もりぞう爺さんの話(上)

  ※もりぞう爺さんの話(下)

  ※なおしのショートショート「鼓動」

    ※なおしのお薦め本(11)池上彰の情報力

   

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